研究課題
従来の古生物学研究は形態を基に行われてきた。本研究では形態観察だけでは不明確なエディアカラ紀~カンブリア紀の化石に地球化学的手法を応用し、研究する。このような研究手法を化学古生物学と命名し、その創成と確立を目指す。本研究では、以下のように化石の化学組成や三次元像観察を行い、その生物種を特定する一連の研究を行なった。①最古の卵を有する節足動物化石の卵の主成分元素分析と化石全体の放射光X線Micro-CTによる内部観察を行なった。その結果、その卵部分にはFeOが多く含まれることが分かった。その結果は、動物卵の動物極側にFeOが濃集することと調和的である。②南中国の瓮安地域のエディアカラ紀(6億年前)のリン酸塩岩層に産する最古の動物胚化石とされる微化石の顕微FT-IR分析を行なった。その結果、その化石から真核生物に特徴的なCH2/CH3比をもつ有機分子を特定した。これまでの形態に基づく研究では動物胚なのかそれとも巨大な硫黄酸化細菌なのかについて不明確であった。本研究は動物胚であることを形態以外の研究手法から初めて示した。③南中国陝西省のカンブリア紀初期の寛川溝層から微化石を採取し、SPring-8の放射光X線Micro-CT分析を使って、それらの三次元像を撮像し、その解析を行なった。その結果、外観上は刺胞動物の幼生化石とされる微化石の内部組織に顕著な左右相称性の構造が見られた。現存する刺胞動物は放射性相称の対称性を持つ。この発見は刺胞動物も出現初期には左右相称性を持っていたことを示し、刺胞動物に一部の左右相称性を特徴付ける遺伝子が存在するという最近のゲノム研究結果を支持する。以上のように、形態観察に加えて化学組成や同位体、Micro-CTなどの化学的手法を行うことにより、従来の研究では分からなかった過去の生物組織を得ることができ、化学古生物学の有用性が確かめられた。
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http://ea.c.u-tokyo.ac.jp/earth/Members/komiya.html