研究課題/領域番号 |
23654180
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (40422092)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 流体包有物 / 鉱物包有物 / 水熱反応実験 / 結晶成長 / 石英 / ザクロ石 / 斑状変晶 / 鉱物脈 |
研究概要 |
本年度は大きく分けて2つの方向で研究を進めた。石英結晶成長の水熱実験:本年度は、流通式水熱反応実験装置を設計、構築した。430度31MPaの条件で、高濃度のSi水溶液から2週間程度で、基板上から数ミリメートルの石英を成長させることに成功した。この石英を複屈折イメージングシステムを用いて解析すると、様々な結晶方位をもつ基盤中の石英粒子がまずその自形面を出すように成長し、その後、自形的な形状を維持しながら成長するという2つの結晶成長ステージがあることが明らかとなった。この成長した石英中には多数の流体包有物が含まれるが、ステージ1では大きな流体包有物が含まれるが、自形面で成長する最後のステージではほとんど包有物が取り込まれないことが分かった。このことは、結晶成長表面のラフネスが流体包有物を取り込むか否かをコントロールしている可能性を示唆する。三波川変成帯のザクロ石斑状変晶の解析:三波川変成帯四国中央部の汗見川ルートの地質調査を行い、ザクロ石帯に存在するチャートから非常に特徴的な組織を持つザクロ石を見いだした。このザクロ石は、周囲の石英を多数取り込んでいるスケルタルな形状をしており、周囲の石英結晶のサイズが大きいところでは大きな結晶を取り込み、小さな結晶の場所では小さな結晶を取り込んでいる。このことは、結晶成長する際に取り込む粒子のサイズは周囲の基質の粒子サイズに依存しており、石英粒子を粒界で割って取り込んでいる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、水熱実験と天然の変成岩・鉱物脈の解析をもとに、鉱物・流体包有物のとり込みメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は、震災後の実験室立ち上げの遅れなどがあったにもかかわらず、水熱実験装置を構築し、石英の結晶成長実験を成功させ、その中に流体包有物を確認している。これは、次年度につながる大きな第1歩といえる。さらに、三波川変成帯の調査より、鉱物包有物の取り込みメカニズムのモデル化に非常に適していると考えられる組織を発見し、解析を進めている。天然での解析は、どのような資料を用いるかによって進展が左右されるものであり、現時点での進行具合はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
石英結晶成長による流体包有物作成の水熱実験 (4-6月):過飽和度、成長速度、基盤結晶の方位をコントロールした実験を行う。それぞれの実験後に薄片を作成し、流体包有物のサイズと空間分布が上記の実験条件の何にコントロールされるかを明らかにする。石英結晶成長による鉱物包有物作成の水熱実験 (10-12月):析出基板上に白金蒸着を行い、結晶成長の際に不純物をとり込むのかどうかを検証する。また、様々な鉱物粉末を基板上に設置し、成長の際に包有物として取り込む条件を明らかにする。天然のザクロ石斑状変晶の包有物取り込み過程の解析(7-9月):ザクロ石の中に取り込まれている石英の結晶方位とマトリックス石英の結晶方位をEBSDを用いて測定し、包有物として取り込む際に結晶をローテンションさせるのかどうかを明らかにする。その他、包有物サイズなどの組織解析を行う。モデル化 (1-3月) 上記の実験および天然の解析を元に、包有物取り込みのメカニズムに対するモデル化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費 300千円:電子プローブ顕微鏡によるザクロ石、および実験で作成した石英の組成分析を東京大学大学院新領域創成科学研究科(柏キャンパス)で行うための分析旅費 (100千円)。研究成果発表および情報収集のための旅費(100千円)。三波川変成帯の調査、岩石試料採取旅費(100千円)。:物品費:300千円:水熱反応装置の消耗品(ステンレス反応管、連結具等)(200千円)。薄片作成用消耗品(100千円):その他:100千円 英文校正前年度分未使用額 390千円は、震災の影響により、水熱実験装置の復旧に予想以上の時間がかかったため、予定していた実験の一部を行えなかったためである。研究全体の進捗は、天然試料の解析をその分進めたため問題はない。未使用分の使用計画:水熱実験用消耗品(ステンレス製反応管、連結具、熱電対、耐火レンガ等)300千円:実験用鉱物試料 90千円
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