研究課題/領域番号 |
23654181
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺崎 英紀 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50374898)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 中性子 / トモグラフィー / 高圧 / フルイド |
研究概要 |
本研究では中性子プローブをトモグラフィー(CT)測定技術に適用し、小型プレスを用いた高温・高圧下における中性子トモグラフィー測定装置の開発を第一の目的とする。このため本年度は高圧CT測定に必要となる以下に示す装置の設計、製作を行った。・油圧クランプ機構の設計:CT測定において、高圧プレスは油圧ユニットから独立して回転させる必要がある。そのため高荷重を保持しつつ油圧ユニットから切り離し可能なクランプ機構を設計した。・加熱・水冷機構の製作:中性子施設既存の小型プレスには加熱機構は備わっていないため、プレス加圧部を改造して、加熱用電極台の付随した加圧機構を製作した。また同時に加圧部となる超硬アンビル及びプレス自体の高温摩耗防止のため水冷機構をアンビル周囲に設置した。これらの機構はイメージングの視野となるプレス水平方向には干渉せず、かつ加熱用電極と水冷部とは電気的絶縁が保てるように設計がなされている。この機構により小型プレスを用いた長時間の高温高圧実験が初めて可能となった。・回転機構付き加熱ユニットの開発:高温下でCT測定を行う場合、加熱ケーブルをプレスに接続したままプレスを回転させる必要がある。このため、電気的接続を保持したまま回転時にもケーブル位置が動かない回転動作に対応させた加熱ユニットを開発した。・試料位置微調ステージの導入:プレス内の試料位置は加圧に伴い動くため、回転中心に試料位置を合わせてCT測定を行うことが必要となる。そこで試料位置微調用のXYステージ(耐荷重60kg)を回転ステージ上に導入した。以上の装置開発により、高温高圧下での中性子トモグラフィー測定の準備が整った。これは中性子という新しいプローブを用いることで、これまで明らかになっていない高温高圧下での水素やフルイドの三次元情報を得られるという点で非常に意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではトモグラフィー用に回転ステージを導入しステージ制御系の立ち上げを行う計画であったが、中性子施設側から回転ステージ設置までが行われたので、本課題では加えて必要となるトモグラフィー測定用加熱、水冷機構および超硬アンビル部を設計・製作した。また位置微調節用ステージの導入も行った。なお今年度は東日本大震災で被災したJ-PARC中性子施設の復旧作業のため、高圧ビームラインでのユーザータイムは来年度に延長された。このため中性子を使用した予備的実験までは実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず本課題で製作した加熱・水冷機構およびステージ系をJ-PARCの中性子高圧ビームラインに設置し、小型プレスへの取り付け作業と動作確認を行う。続いて鉱物片とフルイドの試料を用い中性子カメラを使用して、中性子イメージングのテスト・最適化を行う。さらに試料を加圧し、高圧プレスを回転させてトモグラフィー測定を行い、加圧に伴う中性子イメージのコントラスト変化を調べる。各角度における測定データ解析から試料の任意方向の断面および三次元像を求め、中性子トモグラフィーデータの精度について評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費使用計画としては、まず試料容器として円筒状単結晶ダイヤモンドカプセルを購入する。単結晶ダイヤモンドはフルイド試料を封入するために適しており、これまでのX線を用いた実験でも実績がある。次に圧力媒体やヒーターなど高圧セルに使用するセラミクスおよび金属パーツを購入する。さらに消耗品であるトロイダル形状の超硬アンビル一式を購入する計画である。また中性子実験施設J-PARCでの実験が主となるため、J-PARC出張旅費についても計上する。
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