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2011 年度 実施状況報告書

準安定炭酸塩鉱物の水溶液中における相転移挙動のその場分光観察

研究課題

研究課題/領域番号 23654184
研究機関金沢大学

研究代表者

福士 圭介  金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (90444207)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードモノハイドロカルサイト / 変質 / 減衰全反射赤外分光 / その場観察
研究概要

モノハイドロカルサイト(MHC)はCaCO3・H2Oの組成をもつカルシウム炭酸塩である。MHCは準安定相であり、室内で合成したMHCは水溶液中で数時間から数日程度でカルサイトやアラゴナイトに変質することが報告されている。一方、フブスグル湖の湖底堆積物から数10万年前に相当する深度にMHCが生成していることを見出している。フブスグル湖の湖底堆積物にMHCが長期間保存される原因の解明にはMHCの変質挙動を定量的に理解する必要がある。水溶液中におけるMHCの変質挙動と速度に関する検討はMunemoto and Fukushi(2008)により行われている。その検討では10,25,40,50℃の条件でMHCの懸濁液を攪拌させ一定時間ごとに懸濁液を採取した。採取した懸濁液を濾過・濃縮させ、スライドガラスに塗布し粉末X線回折(XRD)により鉱物同定を行うとともに、ピーク面積から変質程度を定量化した。彼らの方法は、試料の採取時間間隔が25℃の条件では120分であり、実験の時間解像度は高くない。また、分析は試料の乾燥後に行うため溶液中で起こっている反応とは違う現象を観察している可能性は否定できない。減衰全反射赤外分光法(ATR-FTIR)は溶液中に鉱物が懸濁したままの状態で鉱物を構成する分子の結合状態をその場で観察することができる。また赤外分光の測定時間が他の分析法と比べて短く高い時間解像度で分析を行うことが期待できる。本年度はATR-FTIR法による鉱物変質過程を追跡できるシステムを構築するとともに、MHCの変質挙動を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度の計画は、MHCの合成とATR-FTIRを用いたその場変質観察・測定システムの構築であった。MHCの合成については、MHCの生成条件を明らかにすることに成功し、再現性のあるMHC合成方法を確立した。その場変質観察・測定システムでは懸濁液の温度制御とpH測定のために赤外分光器本体外部にMHC懸濁液入りのボトルを設置した。ボトルの懸濁液を、送液ポンプを使用してシリコンチューブ経由でATR結晶に流し、再びボトルに戻るように循環経路を設けた。MHC懸濁液の温度制御のためにボトルをクールスターラ―に設置した。ただしシリコンチューブの循環中に懸濁液の温度が下がるのでウォーターバスで温めたイオン交換水をATR結晶内の反応セル周辺にも流した。また、ATR結晶の懸濁液温度をモニターするためにATR結晶の流路前後に温度センサーを取り付けた。これにより、MHC懸濁液の温度を装置全体で一定に制御することが可能となった。懸濁液はスターラ―により常時攪拌するとともに、pH電極により懸濁液のpHをモニターした。また、IRスペクトルに影響を与える水蒸気の除去のために高純度窒素ガスを装置内に流した。以上のように構成したシステムにより、温度制御が可能なMHC変質のその場変質観察・測定に成功した。

今後の研究の推進方策

前年までに確立したその場変質観察システムを用いて5、15、25および35℃の条件で変質実験を行う。測定開始後、一定時間ごとにIRスペクトルを採取するとともに、少量の懸濁液を外部容器から採取する。懸濁液を固液分離し、溶液はCaおよびMg濃度の測定、固体はSEMおよびXRDによるキャラクタリゼーションに供する。 得られたIRスペクトルの経時変化と水溶液組成の変化を比較することにより、変質メカニズムを考察する。また、MHCと変質鉱物に帰属されるIRバンド面積を時間の関数として整理することにより速度を算出する。各温度で得られた結果をアレニウスプロットで解析し、活性化エネルギーを算出する。本研究では、バッチ式変質実験よりも高い時間解像度で変質挙動を追跡することができ、高い精度で速度を見積もることができる。また時間に伴う水質変化を評価できることから、より詳細な変質メカニズムを明らかにできることが期待できる。不純物を添加した系における変質挙動観察および速度の測定 申請者はこれまでにMgおよびリン酸が不純物として加わった場合、MHCの変質速度は遅延され、その効果はリンがMgよりも著しく高いことを定性的に示している。ここではその場変質観察システムを用いて一定温度(50℃)条件において、Mgおよびリン酸濃度の関数とした変質挙動の観察および速度の測定を行う。得られたIRスペクトルおよび水質組成の経時変化に基づいて、Mgやリン酸がMHCの変質を遅延するメカニズムを明らかにする。また変質速度に及ぼす不純物イオンの影響を速度式に一体化する。

次年度の研究費の使用計画

実験に使用する薬品やガスおよび分光結晶などの消耗品および、成果報告のための学会発表に使用する。設備備品購入の予定はない。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] アルカリ環境で生成するCa-CO3-Mg系準安定相とその地球化学的意義2012

    • 著者名/発表者名
      西山理沙・宗本隆志・福士圭介
    • 雑誌名

      月刊地球

      巻: 34 ページ: 168-172

  • [雑誌論文] Phosphate sorption on monohydrocalcite2011

    • 著者名/発表者名
      Yagi, S. and Fukushi, K.
    • 雑誌名

      Journal of Mineralogical and Petrological Sciences

      巻: 106 ページ: 109-113

    • DOI

      10.2465/jmps.101021a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Monohydrocalcite: A promising remediation material for hazardous anions2011

    • 著者名/発表者名
      Fukushi, K. Munemoto, T. Sakai, M. and Yagi, S.
    • 雑誌名

      Science and Technology of Advanced Materials

      巻: 12 ページ: 064702

    • DOI

      10.1088/1468-6996/12/6/064702

    • 査読あり
  • [学会発表] モノハイドロカルサイトの生成条件2011

    • 著者名/発表者名
      西山理沙・宗本隆志・福士圭介
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会
    • 発表場所
      茨城大学(茨城県)
    • 年月日
      2011年9月9-11日
  • [学会発表] モノハイドロカルサイトによるリン酸の収着2011

    • 著者名/発表者名
      八木新大朗・福士圭介
    • 学会等名
      2011年度日本地球化学会第58回年会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道)
    • 年月日
      2011年9月14-16日
  • [学会発表] モノハイドロカルサイトの生成条件2011

    • 著者名/発表者名
      西山理沙・宗本隆志・福士圭介
    • 学会等名
      地球惑星科学連合2011年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      2011年5月22-24日
  • [学会発表] Formation condition of monohydrocalcite2011

    • 著者名/発表者名
      Nishiyama R, Munemoto T and Fukushi K
    • 学会等名
      Present Earth Surface Processes and Histrical Environmental Changes in East Asia
    • 発表場所
      成都大学(中国四川省)
    • 年月日
      2011年10月10-14日

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公開日: 2013-07-10  

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