研究概要 |
モノハイドロカルサイト (CaCO3・H2O: MHC) は地球表層環境では非常にめずらしい準安定炭酸塩鉱物である. MHCは主に塩湖での産出が認められている(Fukushi et al., 2011). MHCの溶解度は, 無水カルシウム炭酸塩鉱物の安定相であるカルサイトやアラゴナイトよりも1桁高いのみであり, しばしば塩湖で観察されるジプサムに比べると3桁も低い. なぜ低い溶解度を有するMHCが, 高い塩濃度の環境で生成するのかは明らかになっていない. また, MHCの結晶構造にMgは入らないにもかかわらず, 室内実験および天然での産状から, MHCの生成には溶液中にMgの存在が必要であることが示されている(Fukushi et al., 2011 ; Kimura and Koga, 2011). MHC生成におけるMgの重要性の影響に取り組む研究は今までに行われてきた(Kimura and Koga, 2011). しかし, 天然の系でのMHCの生成条件を解明するためには, Ca2+- Mg2+- CO32-の相互の寄与を理解することが重要である. 本研究では, MHCの生成条件を明らかにすることおよびMHC生成におけるMgの役割を明らかにするために, CaCl2、MgCl2、Na2CO3溶液からの系統的な炭酸塩鉱物生成実験を行った. その結果,MHCの生成には含水Mg炭酸塩鉱物との共生が必要であること, MHC生成におけるMgの役割は非晶質から脱水することを妨げ, 生成したMHCの表面をMg炭酸塩鉱物が覆うことでさらなる安定相への変質を防ぐことを明らかにした.
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