研究課題/領域番号 |
23654186
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
芳野 極 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30423338)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 岩石・鉱物・鉱床学 / 炭素同位体 / Fe-C系 / 高温高圧実験 / 同位体分別 |
研究概要 |
鉄合金で構成されている地球コアは液体である外核と固体である内核に分けられる.液体である外核においては地震波による密度の計算などにより,純鉄よりも密度が10 %ほど低く,水素・炭素・酸素・珪素・硫黄などの軽い元素の存在が考えられている.これらのうち「炭素」は溶融状態の鉄に融解しやすいことから,地球コアに含まれていると考えられている.しかしながら,地球コアにおける炭素含有量については未だに定量化されていない.地球コアを含む地球全体の炭素量の見積もりは地球システムの炭素循環を考えるうえで非常に重要である.そのためには初期地球における炭素の分布を理解し,地球内部の炭素の存在について考えることが必要であるといえる.そこで,本研究では,地球コアに含まれる軽元素の主な成分を炭素であると考え,高温高圧実験を行い,Fe-C系の状態図について検討した.また,合成された鉄の炭化物と固体炭素間の炭素安定同位体分別について理解し,初期地球におけるマグマオーシャン環境からコア形成時の炭素の分布について考察を行った.高圧実験は川井型マルチアンビル装置を用いた.出発物質に粉末の鉄と同位体比が既知の粉末のグラファイトを使用し,5~14 GPa,1200~2100 ℃の条件で試料の反応実験を行った.また,状態図を基にした鉄の炭化物-固体炭素間における超高温高圧条件での炭素同位体分別を定量化し、先行研究の鉄隕石における鉄の炭化物-固体炭素間の炭素同位体分別係数を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄粉と粉末のグラファイトを出発物質とした高温高圧実験を行い、初期地球における全地球炭素循環モデルに重要な基礎データの構築が可能となった。本研究では鉄の炭化物とグラファイトまたはダイアモンド間の炭素同位体の分別を発見した。今後さらに実験を行うことで、炭素循環について解析が可能となる見通しが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
高温高圧実験により鉄カーバイドとグラファイトまたはダイアモンド間の炭素同位体分別を発見したが 今後さらに実験の温度圧力範囲を広げ、データの再現性を確認する予定である。さらに核形成時の珪酸塩メルトから鉄メルトの分別を想定した実験を行い、メルト間の炭素同位体の移動を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料準備(出発物質の生成):出発物質はメノウ乳鉢を用いて、エタノール下で鉄粉とグラファイトをすり合わせることで生成する。高圧実験:前年度に引き続き、高圧実験は岡山大学地球物質科学研究センターが所有する川井型超高圧発生装置を用いて行う。分析・測定:前年度に引き続き、以下の分析・測定を行う。微小X線分析(XRD):合成した試料の相を確認するために、試料をダイヤモンドペーストで研磨し、表面の組織について微小部X線分析を行う。電子線マイクロプローブ分析(EPMA):合成した試料の鉄の含有量を定量的に分析するために、新潟大学所有のEPMAを使用する。同位体分析:炭素安定同位体測定は質量分析計(MAT251)を用い、炭化鉄・鉄‐炭素のメルト及び固相について行う。MAT251は非常に微量の二酸化炭素を測定することができる。そこで、測定は結晶単位(マイクロメータースケール)で行い、微細な組織ごとの変化を把握し、同位体分別について検討する。消耗品として石英管・薬品類・液体窒素を購入する。二次イオン質量分析(SIMS):合成した試料のうち同位体比にばらつきが見られるものについては、二次イオン質量分析を行い、さらに細かいスケールの同位体について検討を行う。SIMSに関する設備・機器は北海道大学宇宙化学研究室所有のものを使用する。モデリング:得られたデータを総合的に検討し、地球深部における炭化鉄・鉄‐炭素のメルト及び固相炭素の状態を明らかにし、地球内部の様々なリザーバーにおける炭素量を見積もる。成果報告:本研究で得られた成果はカナダモントリオールで開催される第22回ゴールドシュミット学会において発表する予定であり、国際誌にも公表する。
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