研究概要 |
地球コアを含む地球全体の炭素量の見積もりは地球システムの炭素循環を考えるうえで非常に重要である.しかしながら,地球コアにおける炭素含有量については未だに定量化されていない. 本研究では、川井型マルチアンビル装置を用い高温高圧実験を行った.出発物質に粉末の鉄と同位体比が既知の粉末のグラファイト(SP-2; δ13C= -24.45‰)を使用し,5~14 GPa,1200~2100 ℃の条件で試料の反応実験を行った.実験の結果,5 GPa, 1200 ℃の条件では炭素を8.4 wt.%含む鉄の炭化物(Fe7C3)を確認することができた.また炭素を多量に含む場合,5 GPa, 1500 ℃以上の条件でFe-C系の状態図は液体とグラファイトが共存することが明らかとなった.また,状態図を基にした鉄の炭化物-固体炭素間における超高温高圧条件での炭素同位体分別については5 GPa, 1500 ℃の条件で鉄の炭化物-グラファイト間で3.6‰の同位体分別,10 GPa, 2100 ℃の条件で鉄の炭化物-ダイヤモンド間で2.7‰の同位体分別を示した.先行研究の鉄隕石における鉄の炭化物-固体炭素間の炭素同位体分別係数を加え,Fe-C系の炭素同位体の温度依存性を明らかにした. 炭素同位体分別については溶融状態の鉄には選択的に軽い(12Cに富む)炭素が溶け込んでいくことと,2100℃という超高温条件においても同位体分別が起こることがわかった.以上の結果からマグマオーシャン環境で溶融鉄に炭素が融解し、地球コアが形成されたとすると,12Cに富んだ大量の炭素がコアに存在するのではないかと考察することができる.このことは12Cに富む炭素がすべて有機物起源ではないことを示し,地球深部における炭素循環について,見直すことが必要であるといえる.
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