研究課題/領域番号 |
23654187
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川本 竜彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00303800)
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研究分担者 |
三部 賢治 東京大学, 地震研究所, 助教 (10372426)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | スラブ流体 / 鉱物 / 水流体 / 放射光X線 / 蛍光X線 |
研究概要 |
今年度は、水流体とメルトをダイアモンドアンビルセル型高温高圧発生装置、および、マルチアンビル型高温高圧発生装置内で高温高圧条件におき、放射光X線を照射し微量成分元素の蛍光X線スペクトルを採集することに挑んだ。本実験手法によって、水に富む流体中の微量成分化学の特徴を、広い温度・圧力範囲で観察することが可能であることを確認した。ダイアモンドアンビル型高温高圧発生装置を用いる実験はフランスの大型放射光施設ソレイユで行った。また、マルチアンビル型高温高圧発生装置を用いる実験は兵庫県の大型放射光施設スプリング8で行った。2種類の高温高圧発生装置を用いて実験をすることで、エネルギー範囲の異なる多くの元素について、メルトや、メルトと共存する水流体からの蛍光X線スペクトルの測定に成功した。マルチアンビル型高温高圧発生装置では、セシウム、バリウム、希土類元素を測定することに成功した。マルチアンビルを使用する場合は、測定時の空間分解能が悪く、0.1mmx0.1mmx0.5mm程度(X線進行方向)であるが、より高い温度、高い圧力まで安定して実験が行える。ダイアモンドアンビルセル型高温高圧発生装置を用いた実験では、ルビジウム、ストロンチウムと鉛のスペクトルを採集することに成功した。ダイアモンドアンビルセルを用いた実験は、マルチアンビルより低温低圧条件に限られるが、マルチアンビルより高い空間分解能0.01mm直径x0.1mm(X線進行方向)を得ることが可能である。微量成分元素は、岩石中に少量しか含まれないアクセサリー鉱物(副成分鉱物)に多く含まれている。これらアクセサリー鉱物が安定に(一粒でも)存在している時、水流体にどの程度、微量成分元素が溶存できるか明らかにしたい。今後、単結晶と共存する水流体から微量元素スペクトルが得られるようにセルを工夫して挑戦してみたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水流体とメルトをマルチアンビル型高温高圧発生装置内で高温高圧条件におき、放射光X線を照射し微量成分元素の蛍光X線スペクトルを採集することができるのは、世界中で私達だけである。空間分解能は上述したように悪いが、温度圧力範囲が広く、島弧の下に沈み込むスラブ上面の温度圧力をカバーする範囲での実験条件が整ったと言える。また、水流体に多くは溶存しないとされている元素も、放射光蛍光X線を用いて観察できることがわかった。実験的な困難は当初の予定通りであるが、それを改善できるとユニークな研究成果を得ることができる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに実験・解析を進めていきたい。放射光実験は時間が限られているので、それまでに準備を整えて予備実験を重ねたい。これによって、限られた放射光実験を有効に活用することができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、フランスでの放射光実験が年度の初めにあり、当研究費から旅費を支弁することができなかった。そのため、研究費を持ち越すことになった。今年度は、新たに学生が実験を開始するので、予備実験回数が多くなる。そのため、ダイアモンドなどの消耗品がこれまで以上に必要となる。それら消耗品の購入費用に充当したい。
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