研究課題
ボロンを添加したダイヤモンドは導通を持つことが報告されている。一方、グラファイトから直接変換されたダイヤモンドは、微粒な多結晶ダイヤモンドとなり、強度的に、単結晶ダイヤのそれと同等もしくはより高硬度であることも最近の研究で示されている。そこで、本研究では、均質にホウ素含むグラファイトブロックの作製方法を確立する。そして、このグラファイトブロックを用いて、導電性ダイヤモンド多結晶焼結体の作製、ならびに、グラファイトの高い機械加工性を生かして、高圧実験におけるヒーター材への応用を試みる。比較的緻密なグラファイトブロックを入手し、ホウ酸水を用いて、ブロックの空隙にホウ酸を沈着させることを試みた。グラファイトブロックでは、工場での作製段階において、脱ガス過程で生じる微細な流路が形成される。この流路を利用して、真空排気によりホウ酸水を含浸させた。含浸直後、グラファイトブロックは明かな密度増加を示した。その後、含浸させたブロックを乾燥し、再度、含浸させるというプロセスを数回繰り返した。しかしながら、明かな密度増加を示すほどには、定着させることはまだできていない。今後は、真空高温処理などを施し、ホウ酸(あるいは、ホウ素)の定着を試みる。高硬度導電性ダイヤモンドは、放電加工による成形が可能であることから、高圧実験におけるヒーター材としてのみならず、掘削工具や、電子素子としての工業用途として広い用途が期待される。
3: やや遅れている
ホウ酸水を含浸させる過程まではその手法は確立された。しかしながら、期待しているホウ酸量(5%程度)を定着させるには至っていない。従って、まだ、実際のホウ素添加ダイヤモンドの高圧合成に至っていないため、「やや遅れている」と判断する。
昨年度(2011年度)末に、別途予算で、高温真空電気炉が当研究室に導入された。この電気炉を用いて、1800度C以上の真空高温で含浸させたグラファイトブロックを処理することにより、ホウ素をグラファイト粒間中に定着させる。このホウ素添加グラファイトを用いて、高圧実験によりダイヤモンドへと直接変換させ、導電性ダイヤモンドの合成を行う。
高圧実験に際しては、アンビルの購入に研究費の大部分が費やされると思われる。合成自体には、その圧力が15 GPa以下であることから、一個22,000円(8個1セット)の超硬アンビルを用いる予定であるが、性質検査には、より高圧力の40-50 GPaで行うために、より高硬度なアンビル材として高価な焼結ダイヤモンドを用いる必要がある。この他にも、高圧実験部材の購入に充当する予定である。
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