研究課題/領域番号 |
23654190
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久保 友明 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40312540)
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研究分担者 |
加藤 工 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90214379)
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キーワード | 相転移カイネティクス / 塑性流動 / 放射光X線 / 高温高圧実験 / 沈み込む海洋プレート / 深発地震 / AE測定 |
研究概要 |
1) 共析反応と塑性流動の相互作用と下部マントルスラブの粘性変化:放射光単色X線と変形高圧装置DDIAを用いて、アルバイトの共析コロニーの塑性変形実験を行った。単結晶的な共析コロニーの転位クリープからコロニーの細粒化が起こって粒径依存クリープに発展していくプロセスと下部マントルスラブの粘性変化を考察し論文にまとめ国際誌に投稿した。 2) ファイアライトのオリビン-スピネル相転移と塑性流動:同様に上記手法を用いてFe2SiO4のオリビン-スピネル相転移カイネティクスと塑性流動クリープ曲線をその場観察した。差応力下では相転移の核生成が促進され核生成に必要な過剰圧が減少した。今回行った700-900℃の条件では相転移とともに硬化が起こり、相転移の細粒化による軟化は認められなかった。マントル遷移層条件におけるプレートの軟化と深発地震発生を検討するには、より低温で大きい過剰圧において相転移軟化が起こる条件を制約する必要がある。 3)多点AE測定に関する予備的実験:上記に加え同時に多点AE波形測定による剪断不安定現象をとらえるための予備的実験を行った。ガラスビーズの圧縮実験を行い試料セル周囲3点からのAE波形の取得に成功し、震源の1次元位置を特定した。また放射光X線を用いてアンチゴライトの常温2GPaでの変形実験を行い、流動データと多点AEの同時測定を試みた。あらかじめpre-faultを入れてもAEは測定されず塑性流動による試料の変形が示唆された。クリープ曲線は定常応力を示しその流動応力は2GPa程度であった。 4) シリカの高圧相転移プロセスの放射光X線回折時分割測定:放射光白色X線エネルギー分散法を用いた時分割測定により、ザイフェルタイトが準安定に存在できる温度圧力時間条件を制約し、衝撃を受けた隕石に見られるシリカの高圧相転移のプロセスを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画通りに研究が進行し、多点AE測定に関する予備実験にも新たに取り組んだ。polymorphicなオリビンースピネル相転移と塑性流動に関しては軟化の条件を制約できていないが、共析反応と塑性流動の相互作用のプロセスは理解できつつある。これらの実験技術を生かしてアンチゴライトの塑性流動と稍深発地震、シリカの高圧相転移と隕石の衝撃条件の制約など研究にも進展している。
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今後の研究の推進方策 |
共析反応と下部マントルスラブの粘性率変化、スピネルーガーネットカンラン岩相転移カイネティクス、およびシリカの高圧相転移と隕石の衝撃条件の制約に関しては複数の論文にその成果をまとめる。オリビンースピネル相転移と塑性流動に関しては、さらに追加の実験を行い相転移軟化するプロセスを放射光X線その場観察しその条件を制約するとともに、多点AE波形の同時測定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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