研究課題
本研究では、地球の表層環境を特徴づける海洋・大気を構成する揮発性元素をもたらした材料物質の起源の解明を進めた。炭素、水素、酸素、窒素および硫黄の安定同位体組成は固体惑星物質形成時の環境に関する情報をもたらし得る。同位体組成からもたらされる情報は様々であり、例えば、有機物・氷などの惑星材料物質の反応場の温度であったり、光化学反応などの特異な化学反応の存在であったり、あるいは、微視的な固体惑星物質が集まって形成した小天体の内部に関する温度・圧力・化学情報などが考えられる。揮発性元素の同位体組成を複眼的に調べることにより、上述の複数の選択肢を取捨選択できると考えた。これまでの研究で炭素、水素、酸素、窒素の同位体組成に関しては報告がなされているが、硫黄の同位体組成についてはまだ報告例がない。隕石有機物中のこの同位体変動を解析する技術を確立し、また、その変動の実態を解明することにより、上記の大目標の達成に貢献できると考え、実験を進めた。炭素質コンドライト隕石から有機物を抽出し、同位体イメージングという手法を用いて数ミクロン大の領域に存在する同位体異常を検知する作業を進めた。本年度においては、前年度までに得られたイメージングデータの詳細解析並びに有機物バルク組成の較正を進めた。イメージングは、長時間のイオンカウントを積分して得られるため、分析装置内の温度・電圧などの経時変化に起因したイメージング領域の揺らぎなどの補正を行う必要がある。また、イメージング領域内の「同位体ホットスポット」の化学・同位体組成の正確な値を得るためには、バルク組成の較正が必要である。画像処理・補正プログラムなどを作成し補正を行った結果、CR2隕石から抽出された有機物中約2ミクロン大の範囲において33S/32S及び34S/32Sでそれぞれ3.4%及び4.4%という、大きな同位体異常を有意に観測することが出来た。
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Encyclopedia of Astrobiology, Second Edition
巻: 2 ページ: in press