研究課題
平成23 年度は、まず海藻の試料採取を行い、さらにリグニンフェノールが広く海藻中に存在することの確認、またリグニン構造の有無を検証することであった。海藻の採取は伊豆半島真鶴岬などで実施し、緑藻、褐藻および紅藻を現在30種程度採取した。海藻の分析は、まずリグニンフェノールの存在を広く確認するために、TMAH-GC-MS法にて行った。その結果、陸上植物と比較して極めて興味深いことが何点か見いだされた。(1)量的には陸上植物と比較して千分の一のオーダーであること。(2)陸上植物ではリグニンを構成する主要なフェノールユニットとして、p-ヒドロキシ類(アルデヒド、ケトン、酸)、バニリル類(アルデヒド、ケトン、酸)、シリンギル類(アルデヒド、ケトン、酸)、シンナミル類(p-クマル酸、フェルラ酸)の9種あるが、海藻では緑藻、褐藻および紅藻のいずれにも見いだされたものは、p-ヒドロキシ類のアルデヒド、バニリル類の酸およびシンナミル類のp-クマル酸の3種だけであった。またそのほかに、p-ヒドロキシ類の酸が一部の海藻に、さらにシリンギル類の酸が褐藻類にのみ検出された。したがって、海藻中に見いだされるリグニンフェノールは、量的に極めて少なく、また構成するユニットも陸上植物と比べて単純であることが考えられ、陸上植物の幹を支えるような堅固な構造体を形成していない可能性が示唆された。これは水中では浮力が働くために堅固な構造体が不必要であることと関連しており、理にかなっている。
2: おおむね順調に進展している
海藻中にリグニンフェノールが存在することは、30種程度の海藻で確認した。本年度のもう一つの課題は、海藻中のリグニンフェノールが陸上植物と同様のリグニン構造をもっているかどうかを、溶媒抽出法、アルカリ加水分解法、熱化学分解法(TMAH法)の3種の抽出法にて確認することである。方法的には確立してきたが、海藻への応用は現在進めている。
平成23年度は、まず海藻の試料採取を行い、さらにリグニンフェノールが広く海藻中に存在することの確認、またリグニン構造の有無を検証することを試みてきた。平成24年度は海藻におけるリグニン構造の検証を継続するとともに、リグニンフェノールの炭素安定同位体比の測定を行い、海洋沿岸試料で検出されるリグニンフェノール化合物への海藻からの寄与の大きさを見積もる。
試料の調整のために凍結乾燥機(80万円程度)の導入を計画していたが、他の研究費によりすでに購入した。ゆえに、「次年度使用額」の684,639円と平成24年度請求額の直接経費700,000円と合わせて、研究発表のための旅費(国内および国外)、分析試料の保存のための試料瓶、分析にかかわる消耗品(高純度ヘリウムガス、カラム、その他GC/MSおよびGC/C/IRMS分析のための消耗品)、分析補助者への謝金、印刷費に使用する予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (8件)
Microbiology Indonesia
巻: 5 ページ: 56-60