研究課題
褐藻類15種、紅藻類12種、緑藻類5種の計32種類を用いて、まず海藻中にリグニン用構造の存在を確かめるために、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)熱化学分解法とアルカリ加水分解による分析を行った。前者はエステル結合とエーテル結合を加水分解可能であり、後者はエステル結合のみを加水分解する。アルカリ加水分解法では、いずれの海藻からも脂肪酸類、ステロール類が主要な生成物で、リグニンフェノールは検出されなかった。そのため、海藻中のリグニンフェノールはエステル結合ではなく、エーテル結合で架橋されていることがより確実になった。そこでTMAH熱化学分解法による分析結果を詳細に検討した。いずれの海藻においても、p-クマル酸が403-662μg/g(平均465±245μg/g)最も多く、ついでp-ヒドロキシアルデヒド、バニリン酸がそれぞれ201-245μg/g(平均211±79μg/g)、68-181μg/g(平均134±79μg/g)検出された。海藻に含まれるリグニンフェノールの総量は、1110±467μg/gで陸上植物のリグニンフェノール濃度と比べると1/20程度であることが明らかになった。また、褐藻類のヒバマタ目に属するヤバネモク科とホンダワラ科にはシリンガ酸が111-420μg/gと他の海藻(1.6-170μg/g)と比べて多く含まれていることが明らかになった。陸上植物ではp-クマリルアルコールやp-クマル酸が始めに合成される。海藻にp-クマル酸が多いことは、陸上植物と同様の合成系が存在している可能性がある。また、シリンガ酸はリグニンフェノールの合成系において、p-ヒドロキシ酸やバニリン酸より後に合成されること、また被子植物に多く存在し、裸子植物にはほとんどないことが知られていることから、褐藻類の中でもヒバマタ目は海藻類の中でもリグニン用構造を最も発達させている可能性がある。
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Archaea
巻: 2013 ページ: 72387111
doi:org/10.1155/2013/723871
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