研究課題/領域番号 |
23654198
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飯塚 哲 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20151227)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 炭酸ガス還元 / ラジカル / 低温プラズマ / メタン / メタノール / CO2削減 / インパルス放電 / 重合反応 |
研究概要 |
二酸化炭素をメタンやメタノールなどの低次有機化合物に変換するための還元剤としてH2もしくは水蒸気H2Oを用いる実験を行い,還元の基礎過程を明らかにした.新しく2つの高温プラズマ(CO2とH2 (またはH2O)分解用)と,ラジカル反応用(CH3OHやCH4合成用)の低電子温度プラズマをもつ放電装置を2種類製作した.1つははラジカルの寿命を調べるための2重円筒型の放電装置であり,もう1つはラジカルシャワー型の放電装置である.実験の結果,以下の成果を得た. 1.2重円筒型放電装置では,外側円筒内でのH2放電により生成されたHラジカルが内側円筒内に流れるCO2に照射されるとき,メタンへの変換率が最適となることが分かった.Hラジカルの寿命長はおよそ5mmである.OHラジカルの寿命長は7mm程度である.距離2mmでHラジカルを照射するときメタンの選択率(=メタン/生成された炭素化合物)は最大約41%となった.それ以外の範囲では,CO/CH4比が大きくなる. 2.生成されたCH4は最終的には酸化されてメタノールに変換されるが,酸化剤として水蒸気(H2O)を用いる場合と酸素(O2)を用いる場合で反応が全く異なることが分かった。前者ではメタノールが,後者ではホルムアルデヒドが主に生成される.この実験により,メタン分子とH2O分子の衝突によって,メタノールと水素が生成される基礎過程が明らかになった.3.H2とCO2の分解をそれぞれ独立に行うダブル放電方式を構築した。水素のみのシャワー型の放電による二酸化炭素のメタンへの変換率は55%であり,二酸化炭素の分解を取り入れたダブル放電方式では,二酸化炭素の分解率が43%,メタン選択率が43%となることも分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の製作が完了し、実験結果を得ることができた。ねらいとしては、水素もしくは水蒸気H2Oをが二酸化炭素の還元剤、酸化剤としてメタンやメタノールなどの低次有機化合物に変換することが可能かどうかを調べることにある。また、その基礎過程を明らかにすることである。新しく2つの高温プラズマ(二酸化炭素と水素 (または水蒸気H2O)分解用)と,ラジカル反応用(メタノールやメタン合成用)の低電子温度vラズマをもつ放電装置を2種類製作した.1つははラジカルの寿命を調べるための2重円筒型の放電装置であり,もう1つはラジカルシャワー型の放電装置である. 二酸化炭素の還元剤として水素,メタンの酸化剤として水蒸気H2Oを用いる実験を行い,反応の基礎過程を明らかにしている.また水素と二酸化炭素の分解をそれぞれ独立に行うダブル放電方式を構築した.装置の完了とダブルパルス源の導入により更なる反応の効率の向上を図るための実験をスタートさせることができた。今後は2つパルス放電の位相制御などを目指した実験を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
水素プラズマによる二酸化炭素のメタンへの変換においてインパルス放電の有効性が初年度の実験で明らかになっているが,二酸化炭素と水素放電の両方にインパルス放電を行う実験はなされていない.今後は,二酸化炭素からメタンへの変換におけるインパルス放電の特質を解明し,更なる分解率と選択率の向上を目指す. また,メタンを介してメタノールへ変換する際にメタンと水分子同士の衝突による反応生成過程を検証する必要がある.メタンと水をそれぞれ+と-に帯電させて,正負イオン同士の再結合衝突反応の可能性を実証する必要がある.低圧プラズマ放電方式では気体密度が希薄のため分子同士の衝突による化学反応の進行の確率が低くなることが推測される。これに対して、反応する2分子をそれぞれ正負に帯電させて空間に放出すれば、両者の間の静電気力がお互いを引き寄せ、衝突反応させる確率が増加すると予測される。この方式の検証が必要とされる。特許性が絡むため学会発表は控えているが,今後は特許出願をして公開していく必要もある.
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次年度の研究費の使用計画 |
放電電極などの改造や更新に必要な電気電子材料、電子部品の購入が必要である。また、二酸化炭素や水ガス素など放電のための消耗品経費に使用する。成果の発表や他研究機関の情報を収集するために国内外の学会に積極的に参加する必要がある。このための参加費や旅費として使用する。実験の補助者に対する経費として、データ整理や実験補助に必要な謝金にも予定している。
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