研究課題/領域番号 |
23654200
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井 通暁 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (00324799)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 宇宙・天体プラズマ / 太陽物理学 / 磁気リコネクション |
研究概要 |
太陽彩層などの弱電離プラズマ中では中性粒子との衝突が支配的となるため、磁気リコネクションの際に形成される電流シート構造に変化が現れる可能性がある。実験室で低電離度のプラズマを再現すること自体は比較的容易であるが、高い磁気レイノルズ数との両立は容易ではない。本研究では回転磁場を用いて孤立したトーラスプラズマに外部からエネルギー注入を継続するという手法によって、弱電離プラズマ中での磁気リコネクション現象を再現することを目的としており、研究初年度には真空容器および電源の改修を実施した。直径80cm、長さ5mのステンレス製真空容器を整備し、内部にセラミック絶縁されたループアンテナを1対設置した。IGBTによるインバータ電源によって、90度位相のずれた100kHz程度の高周波電流を1対のアンテナに通電することによって真空容器内部に回転磁場を発生させ、プラズマの準定常維持を実現した。磁気プローブによる内部磁場分布測定の結果、適切なバイアス磁場の下でのみ閉じたトーラスプラズマの形成が確認された。得られた実験結果を踏まえ、弱電離プラズマの一流体近似の成立性に関する検討を行った。ヘリウムプラズマにおいて、両極性拡散および中性粒子との衝突が支配的となるパラメータ領域は比較的広範であり、本実験で達成できる目算が得られたのに対し、発生する現象の時定数がイオンー中性粒子の衝突時定数よりも十分長くなることが必須であり、計測器の周波数帯域を低周波側に広く確保する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の設計・製作、初期実験の実施等は予定通りに遂行することはできた。実験装置を運用できる時間がやや不足したため、実験結果の信頼性がやや不足しているものの、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2つのトーラスプラズマを同時に生成し準定常維持するための内部アンテナを設計製作し、弱電離プラズマ中での磁気リコネクション実験を実施する。磁場強度、中性粒子密度、イオン/中性粒子質量を変化させることによって、弱電離プラズマ中での磁場散逸機構であるホール効果、両極性磁場拡散効果を定量的に評価する。特に両極性磁場拡散効果が支配的となるようなパラメータ領域における電流シート薄化現象を、さまざまな初期電流シート幅において観測することによって、そのトリガ/飽和機構を解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、トーラスプラズマを2つ同時に生成するためのアンテナ部品および磁場/密度測定のための計測器製作のための部品を主に購入する。他には、実験実施のための消耗品、実験補助者の人件費、成果発表のための出張および論文投稿等に研究費を使用する予定である。
|