研究課題/領域番号 |
23655003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
美齊津 文典 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20219611)
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研究分担者 |
小安 喜一郎 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20508593)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | クラスター / イオン移動度 / 異性体 / 質量分析 / 飛行時間型質量分析計 / 化学反応 / 反応速度定数 / 反応機構 |
研究概要 |
本研究では、イオン移動度分析法と飛行時間質量分析法を組み合わせることによって、クラスターイオンのサイズと異性体を分離するとともに、その温度を光電子分光によって規定し、反応過程の解明を行うことを目的としている。具体的な計画として、23年度は(1)クラスターの温度の規定、(2)負イオンクラスター異性体への光電子分光法の適用、24年度は(3)クラスターイオン冷却効果の向上、(4)化学反応速度定数とその温度依存性の測定による反応機構の考察を順に行うことを予定していた。しかしながら、震災による実験中断の影響もあり、幾つか計画の変更を行った。特に23年度は(1)については、イオン移動度分析法における「有効温度」の概念を利用することとして省略した。(2)については、震災によって現有の電子エネルギー分析器の一部に被害があることが判明し、新たに製作することを余儀なくされた。現在は新たな分析装置の製作が完了し、移動度分析装置との連結を待つ状態にある。また、次年度に予定していた(4)については、準備が整ったために一部測定を開始することとした。特に炭素クラスターイオンCn+, n=6-10の領域における、直線と環状構造異性体と酸素、水素(重水素)との反応を観測し、直線構造が環状に比べて数桁反応速度が大きいことを見出し、その反応速度定数を決定した。さらにその温度依存性も測定し、反応機構について全く新たな考察が可能であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要にも記したように、実施計画には、四つの計画(1)クラスターの温度の規定(2)負イオンクラスター異性体への光電子分光法の適用(3)クラスターイオン冷却効果の向上(4)化学反応速度定数とその温度依存性の測定による、反応機構の考察を記載した。これらのうち、平成23年度に予定していた(1)を延期し、24年度の(4)を一部先行して進めており、全体としてはほぼ遅延なく進展している。むしろ、昨年春の大震災の影響を受けつつも、何とか研究計画を達成できていることは、評価に値すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は震災の影響が残り、実施計画の(1)の実施が延期された上、(2)については再製作を行う必要があった。その対応策として、代わりに(4)を前倒しして実施することができたため、研究推進計画に無理は発生していない。(2)の製作も完了し、次年度は(1),(2)を滞りなく実施できる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度未使用の37万円を合わせた177万円を支出する予定である。特に実施計画の(3)の製作費として、30万円、その他の真空部品製作用金属材料費として27万円、また最終年度であるため、研究成果の論文投稿料(20万円)と学会発表のための国内・外国旅費(100万円)にも重点的に使用する。
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