研究概要 |
本研究では、イオン移動度分析法と飛行時間質量分析法を組み合わせることによって、クラスターイオンのサイズと異性体を分離するとともに、その温度を光電子分光法によって規定し、反応過程の解明を行うことを目的とした。 当初の計画では、23年度は(1)クラスターの温度の規定、(2)負イオンクラスター異性体への光電子分光法の適用、24年度は(3)クラスターイオン冷却効果の向上、(4)化学反応速度定数とその温度依存性の測定による反応機構の考察を順に行うことを予定していた。しかし震災による実験中断の影響で、前年度から具体的な計画について幾つか変更を加えた。特に23年度は(1)を省略して従来から適用されている「有効温度」の概念で代用することとした。また、 (2), (4)の一部の測定を前倒しして開始した。 24年度は前年度に引き続き(4)について、炭素クラスターイオンCn+, n=6-10の領域における、直線と環状構造異性体と酸素、水素(重水素)との反応を観測した。その結果、炭素クラスターイオンは直線構造でのみ、酸素や水素が付加することを実験的に示した。さらに、直線構造の末端の炭素それぞれに酸素が一原子ずつ二段階で付加すること反応を確認し、特に二段階目の反応速度定数を正確に決定することができた。さらにその温度依存性も測定し、理論計算も併用して反応機構を議論することができた。また、(2)の適用開始を行うとともに、(3)の新たな冷却型ドリフトセルの製作も完了した。
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