研究課題
2次元時間領域テラヘルツ分光法の開拓にむけて,以下の3点の研究をおこない,それぞれ十分な成果を得た。前年度の成果として,古典的振動子に対する2次元分光時間領域テラヘルツ分光の信号の表式と,均一分布の単一モード系に対する時間領域信号の計算をおこなった。この結果をもとにして,不均一広がりを持つ単一モード系,非線形に結合した2モード系のそれぞれに対して,2次および3次の非線形光学過程それぞれについて,非調和性による非線形性と非線形分極による非線形の2つの場合に対して,時間領域およびそれを2次元フーリエ変換して得られる周波数領域のスペクトルを,さまざまな値のパラメータに対して計算し,一覧表を作成した。これにより,対象とする系の様々な性質が,2次元スペクトルに,どのように表れるのかが,一目で理解できるようになった。2次元分光のデータは一般に非常に複雑であり,そこから有用な情報を得ることは容易ではないことが多いが,このようなデータベースを用意しておくことで,解析が容易にできるようになる。2次元テラヘルツ分光の対象として重要であるタンパク質の線形なテラヘルツ分光測定をおこない,おもにその水和に関して幅広い情報を得た。タンパク質の生体中での機能や,タンパク質に対する様々な操作はおもに水中でおこなわれ,その機能や性質の発現にはタンパク分子周囲の水分子の振舞いが深くかかわっているが,テラヘルツ分光はその超高速ダイナミクスについて,最も直接的に情報を得ることのできる実験手法である。高精度テラヘルツ分光測定装置の開発を行い,それにより,タンパク質分子の水和分子数や,イオンなどによるその変化を観測することに初めて成功した。高温超伝導体からのテラヘルツ波発生の機構解明のために,3角形状の発生素子結晶を作製し,それにより広帯域の周波数可変性を実現した。
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