研究課題/領域番号 |
23655016
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
富永 圭介 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (30202203)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 過渡赤外分光 / 電気光学効果 / 超短パルスレーザー / 赤外検出器 / テラヘルツ |
研究概要 |
本研究では、中赤外領域の短パルスを、電気光学効果を用いて検出し、通常、赤外アレイ検出器を用いて行うサブピコ秒の過渡赤外分光の進展をはかる。特に100 cm-1 から600 cm-1の、従来、過渡赤外分光で行われてこなかった振動数領域での開発を目指す。赤外アレイ検出器は高価であり、液体窒素を必要とし、さらに検出波長に限界がある。本手法では、赤外短パルスを非線形結晶に集光し、電気光学効果により非線形結晶に誘起される複屈折性を検出するため、800nm の短パルスを非線形結晶に導入し楕円偏光特性をバランスフォトダイオードにより検出する。非線形結晶としてZnTeを用いる検出光学系を構築した。使用するミラーなどを極力減らした簡素化な光学系のデザインとした。これにより、800nm-ポンプ-テラヘルツ(遠赤外)プローブ分光装置を作成し、ZnSeなどの無機半導体の信号の検出に成功した。本光学系における電気光学効果の検出のS/N比の向上をはかった。バランスフォトダイオードで検出した信号を、従来はロックインアンプに直接入力し、変調周波数で検出していたが、今回、この出力を、ボックスカー積分器に導入し、ウインドウをかけて検出し、その出力をロックイン検出した。これにより、電気的なノイズの除去が可能となり、また、検出用の短パルスとしてフェムト秒チタンサファイアレーザー共振器の出力を用いた場合、赤外パルスと同期しているパルスのみを検出することができる。また、本手法では、励起パルスと赤外検出用パルスの二つのパルスを制御する遅延光路が存在するため、過渡スペクトルの検出には、二つの遅延時間を制御する、信号の2次元表示法が必要であり、その制御プログラムを作成した。また、現在のZnTeを用いた光整流法で発生する赤外パルスの上限が200 cm-1以下であるため、光パラメトリック発振器の作成に取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、特に100 cm-1 から600 cm-1の赤外領域の短パルスの検出を目的としているため、光源として、通常、中赤外領域の短パルスの発生に用いられている光パラメトリック発振と差周波発生を用いることを計画しており、23年度では、その作成に取り掛かったがまだ完成まで至っていないため。しかし、ZnTeなどの非線形光学結晶に近赤外短パルスを集光して遠赤外領域の短パルスを発生させる光整流法でもある程度、高波数までの電磁波を発生させることは可能であり、光整流法のほうが、光パラメトリック発振と差周波発生よりコンパクトで操作性が高いため、この手法による100 cm-1 から600 cm-1の赤外領域の短パルスの発生も十分検討しなければならない。一方、制御ソフトの作成やボックスカー積分器の使用など、予定以上に進展したところもあった。
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今後の研究の推進方策 |
100 cm-1 から600 cm-1の赤外領域の短パルス光源の開発に力点をおく。3つの異なる方法を検討する。一つは、ZnTeなどの非線形結晶を用いた光整流法である。ZnTe結晶として、厚さが薄いものを使用し、群速度分散の影響を極力押さえる。次に、BBOなどの非線形結晶を用いた光パラメトリック発振と差周波発生法である。差周波発生用結晶としては、ZnSeなどの結晶を検討する。三つ目は、プラズマ発生法であり、再生増幅器からの800nmのパルスとその二倍波の400nmのパルスを空気に集光することにより、発生させる。この手法では、1000 cm-1以上の高波数領域までの赤外短パルスの発生が確認されている。また、検出法としては、ZnTeを用いた電気光学効果のほかに、air-based-coherent-detection法を用いる。この手法は空気を非線形媒体とした検出法であるため、非線形媒体自身の吸収の影響などが無く、広い波数範囲での検出が可能である。また、制御用ソフトの開発を行い、100 cm-1 から600 cm-1における過渡赤外分光の測定を行い、結果のまとめ、発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のとおり、100 cm-1 から600 cm-1の赤外領域の短パルス光源の開発として、1.ZnTeなどの非線形結晶を用いた光整流法。ZnTe結晶として、厚さが薄いものを使用し、群速度分散の影響を極力押さえる。2.BBOなどの非線形結晶を用いた光パラメトリック発振と差周波発生法。差周波発生用結晶としては、ZnSeなどの結晶を検討する。3.プラズマ発生法。再生増幅器からの800nmのパルスとその二倍波の400nmのパルスを空気に集光することにより、発生させる。以上の3つの方法を行い、比較検討を行う。また、検出法としては、ZnTeを用いた電気光学効果のほかに、air-based-coherent-detection法を用いる。さらに、制御用ソフトの開発を行い、100 cm-1 から600 cm-1における過渡赤外分光の測定を行い、結果のまとめ、発表を行う。
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