まず赤外領域の短パルス光源の開発を行った。本研究では、低波数帯の遠赤外パルスを発生するが、3つの異なる手法を用いた。一つは、再生増幅器の出力(パルス幅約100fs)を用いてBBO結晶による光パラメトリック発進(OPA)を用いて2色の近赤外光を発生させ、AgGaS2結晶を用いて差周波発生(DFG)を行ったが、この手法だと1000 cm-1以下の低波数領域のパルスを発生させることができない。ZnTe結晶に再生増幅器の出力を集光させ光整流により発生させる方法では、上限が150 cm-1であった。次に、エアープラズマを用いて発生させたところ、250 cm-1程度まで上限があることがわかった。エアープラズマ法では再生増幅器の出力をBBO結晶を通し2倍波を発生させる。それを基本波とともに空気中に集光することにより発生させることができる。検出方法としては、ZnTe結晶を用いた電気光学効果を用いた方法を使用した。この方法は簡便ではあるが、ZnTe自身の吸収が低波数領域に現れる可能性がある。そこで、air-biased-coherent-detection法を用いた検出を行った。テラヘルツパルスと再生増幅器の一部を集光するが、集光点にDC電圧(1.5kV)をかける。3次の非線形現象により第2高調波が発生するが、DC電圧による電場が局所電場として働くヘテロダイン検出となり、テラヘルツパルスの電場を検出する。このABCD法とエアープラズマによる発生法を組み合わせることにより250 cm-1程度のパルスのスペクトル上限を得た。また、再生増幅器の出力を用いて近赤外ポンプ-テラヘルツプローブの実験を行い、アライメント改良により従来よりS/N比を向上させることができた。ポンプ光とプローブ光の遅延時間を制御する2次元表示の測定プログラムを製作し測定の迅速化をはかった。
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