研究課題/領域番号 |
23655017
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石橋 孝章 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70232337)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 振動SFG分光 / 薄膜キラリティ / 非線形分光法 |
研究概要 |
本研究の目的は,振動SFG分光による薄膜試料のキラリティ測定の感度と精度を高めるために,可変位相差板を用いた新しいキラルSFGの測定手法を開発することである.電子共鳴条件下での振動SFG分光は,高感度な薄膜のキラリティの検出方法として注目されている.キラリティ由来の信号の測定結果の定量性を向上させるために,位相差を自由に設定することができる液晶可変位相差板を用いた新しいキラルSFGの測定方法を提案し,実際に測定システムを構築する.構築した測定システムをキラル有機薄膜やキラル液体表面などに適用しその有効性を検証する. 本年度は,広島大学が現有するマルチプレックス振動SFG分光装置(Maeda & Ishibashi, Appl. Spectrosc., 61, 459 (2007).)を基に,可視プローブ光の偏光状態を可変位相差板によってコントロールできる赤外可視SFG分光システムを構築した.構築したシステムの構成は以下のようである:可視プローブ光は第一偏光子で直線偏光状態とした後,可変位相差板によって偏光状態を変調する.可視赤外両プローブ光を時間空間的に重ね合わせ試料上に集光することでSFG信号光を発生させる.発生した信号は,第二偏光子P2で適切に選んだ方向の直線偏光を選択し,検出系(分光器+マルチチャンネル検出器)へ導かれ,スペクトルが測定される. 構築した装置を用いて,キラル振動SFGが既に報告されている系である,キラルポルフィリン会合体薄膜に適用し,試験測定を行った.PSP偏光配置とPPP偏光配置の切換えによるキラルSFGを与えるアキラルSFGの切り換え測定とPM+P偏光配置とPM-P偏光配置の切換えによるエナンチオマー識別測定を実行し,所定の性能が達成できていることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SFG分光の可視プローブの偏光状態を液晶可変位相差板で変調する測定システムを構築し,それを用いて偏光条件を離散的に切換えることでキラリSFG測定を実行した.その結果,キラリティ検出に必要な偏光の純度を達成することができていることが確認でき,次年度以降の連続的な位相変調実験への準備も概ね整った.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に実装した位相差板を用いた離散的な偏光変調方式に関して,測定を進めることで精度や検出限界の向上を試みるとともに,新たに位相差を連続的に変調することで二次元データとして得られる一連のSFGスペクトルの測定を行う.得られた二次元データを総合的に解析することで,SFG感受率の精度向上を試みる.またいくつかな分子のキラル薄膜について,プローブ波長を変えた測定を行い,SFG感受率のキラル項とアキラル項の相対的な位相関係の波長依存性に関しても検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度にSFG分光装置の光源の増幅器励起レーザー電源の故障修理に予定していなかった研究費の出費もあり研究費が不足しているため,当初計画していたように液晶可変位相差板を整備することができなかった.このため平成24年度の研究においても,信号部分の偏光変調は行わず,プローブ光の位相変調のみで研究を進めていく予定である.また,平成24年度は研究費を,基板,薬品,光学部品等に使用するとともに,平成23年度末に光源のフェムト秒発振器の励起レーザー電源に故障が生じたため,その修理費用としても使用する.
|