研究課題/領域番号 |
23655018
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
丹野 剛紀 秋田大学, ベンチャーインキュベーションセンター, 准教授 (70390721)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 結晶成長 / 不斉 / 有機結晶 |
研究概要 |
キラル結晶を作るアキラル有機化合物(芳香族化合物,ジアリル誘導体,多環式芳香族化合物,ヘテロ環化合物,キノン類など)を既報の中から探索し,再結晶実験を行った.初めには溶液中には基板を置かずに,蒸発法あるいは徐冷法によって再結晶を行い,析出条件を確認した.特に,室温程度かそれ以下の温度で溶液から比較的すみやかに析出することができ,基板の方位に応じて配向して堆積しやすい化合物が後段の実験において好都合なので,その点に留意した.結果,本研究に適当であると思われる複数の物質を見出した.これらは2種類のアキラルな分子からなるco-crystalであり,蒸発法によって有機溶媒から析出させることが可能である.Si結晶やGe結晶はこの溶媒中で安定である.基板材料はテラヘルツ波透過性からおのずとSi結晶やGe結晶などに絞られる.表面の面方位を変えることにより有機化合物が堆積するときの向きの制御が可能になる.低指数面{1 0 0},{1 1 0},{1 1 1}基板やこれらから数°傾いた面方位の基板を用いた.また他に,より安価な等方性の基板(薄い石英やZeonexなどの高分子材料)の表面に一方向の微細な擦り傷をつけて有機化合物の堆積する向きを制御することも可能であるが,これはまだ行っていない.基板に堆積した有機化合物の配向は,結晶の形態や偏光特性(旋光性)などを手掛かりに確認している.以上のほか,具体的な作業として,成長を行うためのベッセル(容器)の設計や,容器の底からテラヘルツ光を照射するための光学系の設計を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験対象とする有機化合物の絞り込みを23年度中に完了する計画であったが,再結晶などに予想以上の時間を要したため,24年度前半までかけてこれを行う.そのほか,装置の設計・構築の進捗は順調である.したがって,全体としては当初の計画に対してやや遅れていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
基板とアキラル有機化合物の組み合わせや温度などの諸条件を体系的に変えながら堆積実験を行い,基板の結晶方位と堆積したキラル結晶の結晶方位との相関を確認する.その後,この相関の強かった物質を対象として,タンネットダイオードを光源として用いて,CWテラヘルツ波照射下における結晶のキラリティ―制御を試みる.キラリティ―制御ができているか否かは,偏光顕微鏡による旋光性と形態の観察,あるいは個体CDスペクトルなどによって確認する.また,照射実験に向け,テラヘルツ波照射窓を有する容器の試作や,その容器の側面あるいは底面からテラヘルツ波を照射する光学系の構築も行う.また,初期核形成の制御のために溶液中に適当な温度勾配を与えるための機構も作り込む予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬(キラル結晶を作るアキラル有機化合物:芳香族化合物,多環式芳香族化合物,キノン類等),基板材料(半導体ウエハ等)および溶剤と調製のためのガラス器具,測定系の構築に必要な光学部品を計上している.このほか,国内で開かれる学会(日本化学会,有機結晶シンポジウムなど)で発表するための参加費,出張旅費,欧文誌に投稿するための費用(可能な場合は,オープンアクセスなど投稿者負担の無料公開制度を利用するも計上した.
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