研究課題/領域番号 |
23655021
|
研究機関 | 公益財団法人豊田理化学研究所 |
研究代表者 |
大野 公一 公益財団法人豊田理化学研究所, その他部局等, フェロー (60012499)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 構造探索 / 探索アルゴリズム / 並列化 / 自動探索 |
研究概要 |
分子集積構造の自動探索のための新しいグローバル探索アルゴリズムの開発を、以下の手法によって進展させた。まず、従来から使用している超球面探索法の探索の範囲を限定する取り扱いに関する探索パラメータを変えた時に、探索のパフォーマンス(探索される範囲および探索に要する計算量・計算時間)の関係を系統的に調査した。 その結果、大きな非調和下方歪みを優先する探索法により、計算時間が飛躍的に短縮されることを見出した。限定散策を行うパラメータを適切に設定すると、全面探索を行った場合のおよそ8割程度の構造を1割(十分の1)程度の計算時間で見つけ出すことができることがわかった。 このような限定探索で得られる構造のエネルギー分布を、全面探索の結果と比較することにより、エネルギーが低く、化学的にもっとも重要な構造が、優先的に探索できていることが確認された。 以上は、探索計算の範囲を限定することによるアルゴリズム上の飛躍的改善であるが、使用する計算環境に合わせて、複数の計算機(コア)を効果的に並列使用することによる探索効率の向上についても検討を進めた。本年度は、コア間の情報伝送が、共通のハードディスクを用いて行うことのできる単一ノード計算機を用いて並列探索を行う方法の性能確認を中心に行い、5原子以上からなる対象に置いて、ほぼコア数にリニアな並列化が行えていることを確認した。 なお、単一ノードのコア数が12個以上の種々の計算環境における並列探索のパフォーマンス(計算時間)を詳細に比較したところ、ハードウエアの構築状況に依存する記憶装置間の情報伝送速度に依存して、並列探索の効率が数倍以上変化することを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
探索パラメータの取り方で探索効率が変わることの検討については、予想していた以上の高い効率化(十倍程度)を見込める方法が見つかった。したがって、座標変数を部分的に固定して探索する次元を減らすやり方を当初考えていたが、その場合は、探索される精度にかなり大きな影響が出て、探索後に種々の補正を行わなければならないので、その方向のアルゴリズム開発は、優先順位を下げるのが適切であると判断した。 部分構造の固定よりも、探索パラメータの効果的な選択の方が重要であることが判明したため、全体の探索効率を向上させるための方策として、探索過程の並列化の方向に重点を移して検討を進めたが、多数のコアが使え、コア間の情報伝送が高速化されている計算機を利用できれば、原子数が非常に多くなっても高い並列化を期待できる見通しが得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の検討を踏まえ、GRRMプログラムの並列化の新方式として、異なるnodeや計算機間での並列化を可能にする超並列化に取り組む。 分子集積構造探索へのGRRM法の応用については、和歌山大学の山門英雄博士の研究グループの協力を得て検討を進める。また、大規模な計算機を用いたGRRM法の応用にいては、東北大学および分子科学研究所の大規模計算機の利用によるパフォーマンスの検討を進める。探索結果のデータベース化や計算機間の連携運用については、国立情報学研究所の佐藤寛子博士の協力を得て進める。 当初より、ハイパーフォーマンスコンピュータを初年度と次年度に導入の予定であるが、2年度目の研究費総額は、初年度と比べてほぼ半減するため、初年度に生じた繰越金約17万円を加えることで、2度目のコンピュータ導入を実行しやすくする。昨年あたりから、個人レベルの研究用計算機のコア数が、12コア程度からさらにそれ以上へと拡大する傾向があり、本研究課題においては、よりコア数の多い計算機の導入が好ましいので、初年度から2度目へと研究費の一部が移算されることは、好都合である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の研究計画にいおて、2台目のハイパーフォーマンス計算機の導入をはかる。1台目と2台目とは、異なるノードのコンピュータであるが、これらを連携して使う形式の並列化を検討し、ノードを超えた並列探索システムの構築を進める。それに要する経費は、初年度の798,000円と程度の金額(約80万円)を見込んでいる。その他の研究経費の使用については、物品費および旅費合わせて27万円程度を見込んでいる。
|