研究課題/領域番号 |
23655021
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研究機関 | 公益財団法人豊田理化学研究所 |
研究代表者 |
大野 公一 公益財団法人豊田理化学研究所, その他部局等, フェロー (60012499)
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キーワード | 構造探索 / 探索アルゴリズム / 並列化 / 自動探索 |
研究概要 |
分子集積構造の自動探索のための新しグルーバル探索アルゴリズムの開発を、初年度に引き続き、つぎのように進めた。 探索範囲を限定して探索効率を高めるやり方として、分子骨格が著しく変形することを回避するよう、意図的に好ましくない変形に対し、ペナルティを課す(エネルギーが著しく高くなるようにする)方法を検討した。この方式は、ポテンシャルの非調和下方歪みを利用するGRRM法のプログラム本体にはほとんど手をつけずに、各構造に対するエネルギー値に対し、不可項を加えるだけでよいため、これまでの探索プログラムを生かした効率的な探索手法であることがわかった。 多数のコアが利用できる計算環境に対し、従来は1つのノードの範囲内でのみGRRM法の並列探索が可能であったが、通常利用できる汎用の計算機では、1ノードのコア数が12ないし16コア程度であり、1ノードで64コアを超える計算環境としては、大型の計算施設を特別に利用できる研究者は限られている。一方、クラスター計算機やいくつかの小型の計算機をクラスターシステム化して利用することは、小規模の計算環境でも実現性が高く、容易に100コアレベルの計算環境が構築できる。こうした、クラスター計算システムは、多数のノードからなるので、本研究において、クラスター計算システム内でノードの壁を超えてGRRM法を並列化する新アルゴリズムの開発を進めた。その結果、1ノードにおけるGRRMの並列化とそん色のないパフォーマンスで、マルチノードシステムにおけるGRRM法の並列化が可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
探索範囲を限定する手法の検討については、探索パラメータの取り方によって一桁高い探索効率が達成できることを見出た。また、意図的にペナルティを導入する方式によって望まぬ方向への無駄な探索を排除するやり方が、きわめて分子集積構造の探索に適していることがわかった。 計算機の効率的利用法の開拓についても、ノードの壁を超えてGRRM法の自動探索を適用できる見通しが得られており、本研究課題の目標に向かって順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ノードの壁を超えてGRRM法を並列化する課題について、すでにクラスター環境で、その次元の見通しが得られているが、さらにそのパフォーマンスの向上と実際の問題への応用を進める。 分子集積構造自動探索の具体的な系への応用については、和歌山大学の山門英雄研究室と共同し、各種のやり方の比較検討を進める。 探索結果のデータベース化については、国立情報学研究所の佐藤寛子研究室と共同して、実用的なデータベースシステムの構築を進展させる。 超並列化について、さらに、計算機の壁を超えた、より一般的な超並列探索アルゴリズムの開発にチャレンジし、分子集積構造自動探索の新しいアルゴリズムの開発を最高水準に進展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度及び2年度目に導入したハイパフォーマンスコンピュータが、きわめて効果的に探索計算に利用できており、高性能の計算機をより多数導入できた方が本研究の遂行に好都合であることは明らかであるので、2年度目の繰越金と3年度目の予算を合わせて、3台目の計算機(75万円程度)の導入を検討している。残額は、学会等への参加旅費に充てる見込みである。
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