研究課題/領域番号 |
23655023
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大村 英樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (60356665)
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キーワード | コヒーレント制御 / 量子制御 / 位相制御レーザーパルス / 光イオン化 |
研究概要 |
レーザー光を用いて物質の量子状態や量子ダイナミクスを直接操作し、物性や機能を制御しようとする量子制御(またはコヒーレント制御)に関する研究が近年精力的に行われている。申請者は波長の異なるフェムト秒光パルスを重ね合わせ、その相対位相を精密に制御した位相制御光による異方性トンネルイオン化とそれに基づいた気体分子の分子配向制御を世界に先駆けて実現し、位相制御光と気体分子との相互作用は位相に強く依存する多彩な量子現象を示すことを明らかにした。位相制御光は従来の光とは本質的に異なった性質を持っているため、光の位相に関わる新しい量子現象の観測、さらに位相制御光を用いた物質制御の新しい方法論を提示できる可能性がある。 本研究課題の目的は、位相制御光と物質との相互作用による量子現象の探索をこれまでの気相分子から液相中の分子に展開すること である。具体的には以下のとおりである。(1)位相制御光と液相中の分子との相互作用によって引き起こされる量子効果を系統的に探索する実験手法を確立し、総合的な理解をする。(2)位相制御光を用いた新しい方法論に基づく物質操作法として、位相制御レーザーパルスによる液相中分子の特定分子の選択イオン化による破壊とそれに基づく化学物質の濃縮を試みる。 H24年度は、昨年度に構築したフェムト秒過渡吸収2色性測定装置で位相制御レーザーパルスによる液相中分子の異方性トンネルイオン化の観測の実験を行った。現在のところ、ヨウ化メチルを対象分子として行った。レーザーの位相に依存する現象を観測観測することに成功した。しかしながら異方性トンネルイオン化による配向分子選択効果かどうか現時点ではは断定できず、さらなる実験と注意深い解析が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者らはこれまでに、位相制御レーザーパルスによる気体分子の異方性トンネルイオン化とそれに基づいた分子配向操作(配向分子選択イオン化)を世界に先駆けて実現した。 本研究の目的はでは、対象を気体分子から液相中の分子を対象を拡大して、位相制御レーザーパルスによって引き起こされる量子効果を広く探索することである。研究代表者らがこれまでに発展させてきた位相制御レーザーパルスによる配向分子選択イオン化は、位相制御レーザーパルスの非対称光電場と分子の非対称な波動関数との強い非線形相互作用に基づく光のパルス幅(100fs)よりも十分短い時間領域で起こる超高速現象である。そのため、原理的には、分子が凝集して運動に影響を及ぼしあう液相中でも異方性トンネルイオン化に基づく分子配向操作が実現可能であることが期待された。 本年度において、液相中分子においてレーザーの位相に依存する現象を観測することに成功した。しかしながら異方性トンネルイオン化による配向分子選択効果かどうか現時点ではは断定できず、さらなる実験と注意深い解析が必要であることがわかった。液相中の分子では、分子が凝集して運動に影響を及ぼしあうためことに起因する効果が予想以上に複雑に絡み合っていることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、フェムト秒過渡吸収2色性測定装置を用いて、位相制御レーザーパルスによる液相中分子の異方性トンネルイオン化の観測を行う。昨年度に観測したレーザー位相に依存する現象に対して、対象分子を系統的に変えた実験を行い、位相敏感現象の解明に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
光学消耗品や測定試料に使用予定である。また情報収集や成果発表のための旅費にも使用する予定である。
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