研究課題/領域番号 |
23655024
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
河合 英敏 東京理科大学, 理学部, 准教授 (50322798)
|
研究分担者 |
鈴木 孝紀 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70202132)
|
キーワード | 水素結合 / アミド / 結晶構造 / 次元制御 / 自己集合 / 超分子 / ゲル |
研究概要 |
本研究では、非常に単純な化合物である2,2-インダンジカルボキサミド誘導体が水素結合形成により強固な2次元シート構造へと集合することを利用し、その構造修飾により、0~3次元までの多様な構造の次元制御とその応用を目的として研究を行っている。 24年度においては、①H23年度に調査した一連の縮環マロナミドの集合特性をより汎用性の高い骨格に応用する目的で、アセタール交換もしくはカップリング反応によって各種機能性ユニットの導入が可能な汎用性縮環マロナミド骨格の合成を検討した。6員環アセタール部位とブロモフェニル基を有する骨格の合成に成功し、それ自身がこれまでと同様に1分子あたり8本の水素結合が形成され、上下に縮環構造が突き出た2次元シート構造を形成することを確認したことに加え、鈴木カップリングによりπ共役ユニットの拡張が行えることを明らかにした。今後、種々のπ共役ユニットの導入を検討していく予定である。 また、②嵩高いトリプチセン骨格を縮環することで2次元シートがまるまったチューブ構造の構築が可能ではないかと考え、H23年度に合成した無置換トリプチセンが縮環したマロナミド誘導体に加え、アルコキシ基を導入したキラルトリプチセン縮環マロナミドを合成した。これらはいずれも芳香族溶媒などをゲル化することが見出され無置換体では剛直な直線状ファイバー、キラル体のラセミ混合物からはねじれたらせん状1次元ファイバー構造が形成されることがわかった。今後、キラル体の光学分割を行ってその集合形態を調査するとともに、これらの水素結合様式の詳細および溶液中での集合形態の調査を進めていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに10種以上の多様な新規化合物を合成し、それぞれ単結晶構造解析によりその集合構造を明らかにしてきた。その結果、本研究の根幹となる縮環マロナミド構造が規則正しい集合構造をとることを明らかにすることができ、本来、予測が難しい結晶中での集合構造の設計が可能になってきている。さらに多様な構造修飾を可能にする汎用性縮環マロナミドの合成にも成功したことから、より効率的な調査が可能になると考えている。 また、その水素結合の方向性を阻害することで構造の次元制御が可能であるという考えをもとに設計、合成したトリプチセン縮環体は、無置換体では剛直な1次元ファイバー構造、キラル修飾体ではらせん状1次元ファイバーが形成されるなど、いずれの場合も予想通り1次元伸長構造を形成することから、分子設計により集合構造の次元制御が可能であることが実証されてきたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで合成してきたπ共役ユニットを有する誘導体に加え多様なユニットを導入した誘導体を合成し、その集合構造が分光学的特性など物性にどのような影響を及ぼしているかを引き続き調査していく。 また、トリプチセン縮環体が形成する1次元ファイバー構造が、実際にチューブ構造を形成しているのかどうか、X線構造解析などを通して明らかにし、その構造の応用性を調査していく予定である。 また、新たに、嵩高い骨格を利用した0次元カプセルの構築および汎用性縮環マロナミドを利用した3次元格子構造の構築を検討し、それらが持つ物性や応用性についても調査していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費はおもに新規化合物合成のための試薬など消耗品に使用する予定である。また、諸物性の測定に要する依頼測定にも使用する予定である。 また、最終年度となることから、これまで得られた成果を報告する旅費および論文印刷費用にも使用していく予定である。
|