研究概要 |
金属蛋白質は生体内で重要な役割を果たしているが、その機能発現状態においては配位性側鎖を含む種々の側鎖や金属の相互作用により、金属近傍や全体の構造が適切に制御されている。また機能発現に至る過程においては活性型構造への分子折り畳み(フォールディング)も重要である。本研究は、配位性側鎖を含む大規模な人工の側鎖配列制御連結系を構築してその分子折り畳みと機能発現について知見を得ようとするものである。平成23年度は、我々が開発した有用なスペーサーユニットである 4,7-ジブロモベンゾ[b]チオフェンの種々の反応と多様なビルディングブロックの合成について、以下のように検討した。まず4,7-ジブロモベンゾ[b]チオフェンの2-位を選択的にリチオ化した後、ボロン酸エステルに変換し、クロスカップリング反応により4-ピリジル側鎖を導入した。同様に2-位にヨウ素原子を導入した後、クロスカップリング反応により段階的にエチニル基およびジフェニルポルフィリンユニットを導入した。次に、主鎖を構築する置換基の導入について検討した。即ち、ジブロモベンゾ[b]チオフェンの4,7-位での鈴木-宮浦反応によりフェニル誘導体あるいはビフェニル誘導体を連結し、主軸の長さが約30Åになるオリゴアレーン系を構築した。同じく4,7-位での薗頭反応により主鎖部分にシリルエチニル基を導入した化合物も合成した。また7-位の臭素原子をヨウ原子に変換して、4-ブロモ-7-ヨードベンゾ[b]チオフェン誘導体とした後、その段階的クロスカップリングにより、側鎖のシークエンスを制御した形の連結系を構築した。さらに4-ピリジル基を側鎖とするユニットに亜鉛ポルフィリン誘導体を加えてNMRスペクトル変化を測定し、配位性相互作用に関する基礎的知見を得た。以上により、本連結系を分子折り畳み研究に利用する準備ができた。
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