研究課題/領域番号 |
23655026
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
豊田 耕三 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50217569)
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キーワード | 分子建築 / 人工酵素 / 配位子 / 金属錯体 / 錯体触媒 / スペーサー / 高分子 / 有機典型元素化合物 |
研究概要 |
金属蛋白質は生体内で重要な役割を果たしているが、その機能発現状態においては配位性側鎖を含む種々の側鎖や金属の相互作用により、金属近傍や全体の構造が適切に制御されている。また機能発現に至る過程においては活性型構造への分子折り畳み(フォールディング)も重要である。本研究は、配位性側鎖を含む大規模な人工の側鎖配列(シークエンス)制御連結系を構築してその分子折り畳みと機能発現について知見を得ようとするものである。平成24年度は、まず我々が新規化合物として合成・開発した有用なスペーサーユニットである 4,7-ジブロモベンゾ[b]チオフェンの代替合成法について検討した。即ち臭いの強い2-メチル-2-プロパンチオール(t-ブチルメルカプタン)を用いる方法に変えて、より取扱い容易な1-アダマンタンチオールを用いる方法について検討し、同じく4,7-ジブロモベンゾ[b]チオフェンを得ることができた。そこで次に、疎水性オリゴアレーン主軸両末端に極性主鎖部分を連結した両親媒性型連結系の構築について検討した。即ち疎水性主軸末端ユニットにホルミル基を導入した後、親水性鎖部分を持つアミンに変換し、さらに保護基を導入した後、前述の4,7-ジブロモベンゾ[b]チオフェンから誘導した主軸中央部ユニットに接続した。さらにもう片方の主軸末端ユニットにもホルミル基を導入した後、クロスカップリングにより先の半完成主軸部分に連結し約30Åの長さを持つ主軸を完成した。これを極性鎖を持つα,ω-ジアミンと反応させることにより、複数の主軸を有する両親媒性型(エチニルチエニル)オリゴアレーン連結系を構築することができた。本手法は種々の側鎖の配列制御連結に適した方法であり、次年度以降でさらに有効性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度研究により、当初目的であった複数の主軸を有する両親媒性型(エチニルチエニル)オリゴアレーン連結系の構築方法が確立した。この誘導体は分子量が約3000であり、人工の側鎖配列(シークエンス)制御連結型両親媒性化合物としてはかなり大きなものである。また、長い極性部分と長い疎水性部分の繰り返し構造から成るため、これを水中に入れれば分子折り畳み(フォールディング)を起こすことが期待される。しかし特定の折り畳み構造をとらせるためには、長い疎水性領域の中に水素結合を起こす極性置換基や金属配位性の置換基を側鎖置換基として導入して、周辺環境(水)から隔離された部分での静電的相互作用を起こさせることが効果的である。今回の連結系構築手法の確立により、具体的に側鎖官能基を導入していった誘導体の合成と評価という、次のステージに進むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
大きな分子に特定の折り畳み構造をとらせるためには、長い疎水性主鎖領域の中に、側鎖置換基として水素結合を起こす極性置換基や金属配位性の置換基を導入することにより、周辺環境(水)から隔離された部分での静電的相互作用を起こさせることが効果的である。既に平成24年度研究により、基本的連結手法と連結系の形はできている。これを基に、スケールアップ合成と連結を行い、大規模両親媒性システムを構築する。即ち、金属配位性置換基としてのピリジル基を側鎖に導入したユニットを用いて、各30Å程度の長さに揃えた複数の疎水性主軸を持つ大規模両親媒性連結系を構築し、その分子折り畳みについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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