研究概要 |
これまでに、鈴木―宮浦カップリングを利用して、ピリジン架橋のβ,β-2重架橋ニッケルポルフィリン(ポルフィリンベルト)の2量体や3量体の合成をおこない、その曲がった分子構造をX線結晶構造解析で明らかにした。これらのポルフィリンリガンドにPd(II)塩を作用させるとパラジウムがポルフィリンのメゾ位のC―H結合活性化を経て、ポルフィリンピンサー化合物が生成することも見いだした。これらのポルフィリンピンサー化合物では、電子共役が強まり、2光子吸収断面積が2倍に増強されることも明らかにした(JACS, 132, 11868 (2010))。また、これら成功を踏まえ、同様の分子内環化により、環状ポルフィリン4量体の合成にも成功した。即ち、テトラホウ素化ポルフィリンを合成し、これを2,6-ジブロモピリジンと鈴木―宮浦カップリングさせテトラキスブロモピリジルポルフィリンを合成した。続いてこれらのホウ素化化合物と臭化物のクロスカップリングにより、ポルフィリンチューブが10%の収率で再現性よく合成できた。その結晶構造解析にも成功しトルエン中でC60を大きな会合定数(Ka = 5.3 x 105 M-1)で補足することも明らかにした(JACS, 132, 16356 (2010))。このポルフィリンチューブやそのフラーレンとの会合体の光誘起電子移動や電荷分離過程は、極めて興味深いが、中心金属がNi(II)でd-電子の影響があり、光物性の測定に向いていなかった。また、脱ニッケル化は、大きく歪んだポルフィリン骨格のためか、非常に難しく成功していなかった。そこで、銅ポルフィリンで同様の反応を試み、脱金属化を経て、ポルフィリンチューブのフリーベースの合成を行った。
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