本研究ではポルフィリン金属触媒を活用したヘテロ-ディールス・アルダー反応に着目して、医薬品や農薬等の生理活性物質に多く含まれるピペリジン環骨格の簡便構築法の開発を検討した。その結果、カチオン性ポルフィリンコバルト(III)触媒を用いれば、不活性イミンと不活性ジエンのヘテロ-ディールス・アルダー反応が、穏和な条件にて進行してピペリジン環化合物が得られることを見出した。カチオン性サレンコバルト(III)錯体を触媒に用いた場合には、このヘテロ-ディールス・アルダー反応は全く進行しない。環化異性化反応は原子効率の高い優れた反応であり、主に白金やロジウム、ルテニウムなどの後周期遷移金属触媒を用いることにより、高い収率と高度な位置・立体制御が達成されている。本研究では、マンガンの経済性、環境調和性、さらに特有の反応性に注目して、これを触媒とした環化異性化反応の開発を行った。その結果、カチオン性ポルフィリンマンガン(III)触媒を用いることにより、エンインの環化異性化反応が進行して、ピペリジン環化合物またはピロリジン環化合物が収率良く得られることを見つけた。また、この反応では、カチオン性マンガン触媒の対アニオンを変えることにより、優先して生成する環化体生成物を選択できることを明らかにした。
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