研究課題/領域番号 |
23655037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依光 英樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00372566)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | π共役系連結 / ポルフィリン / パラジウム / 銅 / ブタジイン |
研究概要 |
環状ポルフィリン多量体は、光合成中心における光捕集アンテナのモデル分子として、あるいは新規機能性分子創成の観点から、古くから盛んに研究がおこなわれてきた。なかでも連結基としてアリール基を用いた環状ポルフィリン多量体は数多く合成され、その物性が調べられてきた。しかしながら、ポルフィリンに直結したアリール基はポルフィリン面にほぼ直交するため、発色団同士の大きな電気的相互作用は期待できない。一方でブタジイン架橋環状ポルフィリン多量体はポルフィリン間の大きな電気的相互作用が期待できるが、その合成例は限られている。 申請者は、β,β’-ジアルキニルポルフィリンから銅(II)を用いたGlaserカップリングによりブタジイン架橋環状ポルフィリン二量体が効率よく生成することを見いだした。また、パラジウム(II)触媒を用いることによりブタジイン架橋ポルフィリン三量体が選択的に生成することを見いだした。銅(II)を用いた反応では三量体はほとんど得られなかったため、この選択性は炭素-炭素結合形成時における反応機構の違いに由来すると考えられる。 このように、ブタジインユニットを蝶番にしてπ共役系を自在に連結する手法を開発し、新しいポルフィリン多量体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初シリルメチル基を連結基として用いた手法を検討していたが、その過程で、ブタジインを連結基とする手法を考案し、これを用いると革新的なポルフィリン多量体を構築できることを見いだした。シリルメチル基連結法についても研究は続けているものの、ブタジイン連結の方がπ系の連結に有利な点も多い。すなわち、シリルメチル基を用いる方法についての研究は若干遅れ気味ではあるものの、当初の計画を上回る連結法を開発しており、全体としてみると研究は予想外の良い展開を見せている。
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今後の研究の推進方策 |
シリルメチル亜鉛反応剤を用いる連結法の確立 二分子のo-ジブロモベンゼンと二分子のシリルメチル亜鉛反応剤のクロスカップリング反応をモデル反応として、π共役系連結反応を確立する。前年度までにパラジウム触媒を用いて一段階目のクロスカップリング反応が効率よく進行することを確認しており、更なる反応の効率化を目指す。また、二段階目のベンジルシランのクロスカップリング反応についても低収率ながらも目的生成物が得られることがわかっており、配位子、溶媒、塩基などの検討を行い、大幅な収率の向上を目指す。得られた知見を元に反応の基質適用範囲を調査する。続いて、二つのメチレン鎖で繋がった分子を酸化し、縮環型拡張π共役系分子の合成法を確立する。ブタジインを連結基とする手法の展開 ブタジインによる連結法をポルフィリン以外の共役系分子にも適用していく。具体的には、テトラチアフルバレンやピレンの連結を検討し、銅触媒とパラジウムを使い分けることで、巨大環状π共役系分子の構造制御を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降も、π共役系連結反応に用いるパラジウム触媒、配位子、蝶番反応剤前駆体としてクロロメチルジメチルクロロシラン、反応用・抽出精製用・分析用溶媒、反応容器などの消耗品にほとんどを充てる予定である。また、研究成果を有機金属討論会や日本化学会春季年会などの国内学会で発表するための旅費や廃液処理費用も必要である。
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