本研究では、精密有機合成の視点に基づく新しい反応設計により、高立体選択的なリビングカチオン重合の開発を目指した研究を行った。残念ながら、この目標を達成することはできなかったが、この研究を進展する過程において、高立体選択的なラジカル重合の開発に成功した。すなわち、アミノ酸由来の不斉補助基であるオキサゾリジノンを持つアクリルイミドをモノマーとして用い、そこにマグネシウム系のルイス酸を添加してラジカル重合を行うと、99%以上の高いイソ立体規則性を持つ重合体が得られることを見いだした。これまで、極めて構造の特殊なモノマーを用いることで、本系と同等の高い立体規則性重合の進行が報告されている。しかし、このような構造の単純なモノマーを用いて、このような高度な立体規則性重合が達成されたのは初めてである。 本重合系のもうひとつの特徴は、触媒量のルイス酸で高い立体規則性が発現する点である。すなわち、モノマーに対し、20%量程度のルイス酸を加えた場合に置いても、>99%以上の高いイソ立体規則性が発現した。これは、触媒量の不斉ルイス酸を用いることで、立体規則的ラジカル重合が進行する可能性を示した結果であり、大変興味深い結果である。
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