研究課題/領域番号 |
23655040
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田原 一邦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40432463)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 超分子化学 / 二次元ポリマー / STM / 固液界面 |
研究概要 |
本課題では、固液界面での自己集合と化学反応性がプログラムされた有機分子を用いて、明確な二次元ポリマーを合成することを目的としている。具体的には、(1)「イミン形成反応を利用した二次元ポリマー合成」と、(2)「ジアセチレン間の橋掛け反応による共有結合形成」の二つの課題に取り組んでいる。 申請書に記載された計画に従い、課題(1)ではイミン形成反応の実施のため、デヒドロベンゾ[12]アヌレン(DBA)の長鎖アルキル鎖の先端に、反応点となるアミノ基を備えたを合成した。この分子の合成には、交互に異なるアルキル鎖を導入する必要がある。そのため、ベンゼン環上の二つの水酸基が異なる保護基(R1 = methoxymethyl, R2 = tert-butyldimethylsilyl)によって保護されたDBAを用いた。なお、アルキル基の導入は、直鎖のアルキルハライドと別途合成したアミノ基を有する側鎖ユットとの段階的なアルキル化反応により行った。同時に、ゲストとして用いる六つのホルミル基を有するハブ型架橋分子も合成した。 H19-21年採択の若手研究(B)において、側鎖にジアセチレン部位を含むDBAの合成を行った。この分子は固液界面においてハニカム型に配列した。しかし、この構造に対して紫外光を照射すると、重合反応そのものは進行しているが形成されるオリゴアセチレン部位の歪みから、生成した分子が表面から脱着していることがこれまでに分かっていた。そこで課題(2)では、光照射後の生成物の脱着の防止を目的に、ブタジイン部位を含むより長いアルキル側鎖を持った新たなDBAを合成した。 課題(1)および(2)で合成した化合物が有機溶媒と固体表面の界面で形成する二次元分子配列について調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では大きな問題もなく、順調に研究が進展している。具体的には、課題(1)においては、アミノ基をアルキル側鎖の末端に導入したデヒドロベンゾ[12]アヌレンの合成に成功するとともに、ハブ型のゲスト分子についても合成することができた。また、課題(2)についても、より長いアルキル側鎖を有する分子を合成した。 新たに合成した分子について、有機溶媒とグラファイトの界面でその配列について検討したところ、課題(1)で合成した分子がハニカム型に配列しないことが分かった。これについては、分子設計を変更して現在検討をおこなっている。課題(2)で合成した分子については望み通りにハニカム型の配列を形成することを見出した。 このような進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、固液界面における化学反応による二次元ポリマーの合成に主に取り組む。 課題(1)では、前年度合成した分子がハニカム型に配列しないことが分かったので、アミノ基近傍に導入している官能基について再検討し、新たな分子を設計し合成する。また、二次元ポリマーをイミン交換反応により合成することも検討する。ハニカム構造が形成された場合には、空孔にハブ型架橋分子を吸着させ、二次元ポリマーを合成する。共有結合形成に伴う構造歪みにより、分子の脱着が起こる場合には、アルキル鎖長の伸長や、ゲスト分子の再設計により解決する。なお、反応の進行はSTMによる直接観察に加えて、表面ラマン分光法により確認する。ポリマーが得られた場合には、その強度や弾性をAFMにより表面で計測する。また、合成した二次元ポリマーの転写と溶媒を用いた洗い流しによる表面からの剥離も試みる。種々の溶媒を用いて検討する。剥離が起こらない場合には、表面の電位の制御により脱着を促進させる。脱着させたポリマーは各種分析法によりその基礎物性を調べる。 課題(2)では、前年度に合成した分子が形成するネットワークに対する光照射や熱による共有結合形成による二次元多孔性ポリマーの合成を検討する。固液界面や溶媒を除いた大気中においても検討する。課題(1)と同様に反応の進行はSTMおよび表面ラマン法によって確認する。光や熱で望みの構造体が形成されない場合には、ラジカル開始剤や求核剤などの試薬の添加による共有結合の形成について固液界面において検討する。 なお、本年度も海外研究協力者であるベルギールーバン大学のSteven De Feyter教授と協力して本課題に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りの計画を進めていく。
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