研究概要 |
本研究では、トリオキソトリアンギュレン(TOT)を基盤とする、「電子スピン非局在性」と「液晶性」を併せ持つ巨大π電子系有機ラジカルディスコティック液晶の開発と新機能の創出を目指す。<課題A>種々の長鎖アルコキシ基を導入した三回対称型TOT誘導体、<課題B>TOTに非対称に置換基を導入したTOT誘導体の設計・合成を行い、それらの電子スピン構造などの基礎物性を明らかにしつつ、液晶性の発現と機能化について研究を行う。 <課題A>TOTの臭素体に対するクロスカップリング反応を駆使することにより、巨大π電子系有機ラジカルディスコティック液晶の候補物質である、フェニレン基を介してアルコキシ基(OMe, O-n-C6H13, O-n-C12H25)を9つ導入した誘導体の合成に成功した。これらのラジカルは他のTOT誘導体同様高い安定性を持ち、室温・空気中でも取り扱うことができる。また、電気化学測定や各種磁気共鳴スペクトル測定および量子化学計算を行い、これらの化学修飾が酸化還元挙動や電子スピン構造に与える影響を理論的・実験的に解明した。さらに、これらの一電子還元体のアニオン塩に対して温度制御下での偏光顕微鏡測定を行い、これが液晶性を示すことを明らかにした。中性ラジカル誘導体については、熱分析を実施した。 <課題B>TOTに非対称に置換基を導入したTOT(t-Bu)(Br)2 の合成に成功し、非対称置換基導入体の合成手法を確立した。また、TOT(t-Bu)2(Br)のラジカル前駆体を原料に用いたクロスカップリング反応を行い、臭素原子を様々な官能基と置換できることを明らかにし、いくつかの誘導体については単離にも成功した。
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