極めて高い求電子性を有する反応性中間体アラインを鍵中間体とし,中性求核剤との反応による双性イオン形成を利用した新形式のタンデム型三成分連結反応を開発することを目指した.特に,双性イオンのアニオン部位と超原子価アート錯体を形成しうる第三成分を用いた反応開発に焦点を絞った. 本年度は,イミンを求核剤とし,第三成分にフッ素を複数個有するパーフルオロアリールブロミドを用いると,期待どおりタンデム型の三成分連結反応が効率的に進行し,アミノ基置換アリールブロミドを一段階合成できることを明らかにした.反応は,アラインへのイミンの求核付加による双性イオン形成,双性イオンのアニオン部位とアリールブロミドとの超原子価アート錯体形成を経た金属ー臭素交換型の反応,生じたアリールアニオン種のイミニウム炭素への求核付加,により進行しており,炭素ー窒素結合,炭素ー臭素結合,炭素ー炭素結合の三つの結合を一挙に構築できる.反応の基質適用範囲は広く,様々なアラインやイミンから多様な三成分カップリング生成物を得ることができた. 昨年度の成果である,イソシアニドを求核剤としたイミノ基置換アリールブロミド合成や,環状エーテルを求核剤としたアルコキシ基置換アリールブロミド合成と併せて,本研究で設計した反応系が様々な反応剤に拡張可能な一般性高いものであることを実証できた.中性求核剤や超原子価アート錯体形成可能な第三成分の組合せは無尽蔵であるため,本手法が多様な多置換芳香族化合物合成の新指針となることが期待できる.
|