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2011 年度 実施状況報告書

求核触媒能をもつ軸不斉型ピリジンNーオキシド二量体の創製と革新的不斉合成

研究課題

研究課題/領域番号 23655045
研究機関東京理科大学

研究代表者

椎名 勇  東京理科大学, 理学部, 教授 (40246690)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード有機化学 / 有機合成化学 / 軸不斉 / 不斉配位子 / 不斉触媒 / 光学分割
研究概要

本申請課題では「軸不斉を有する新規塩基触媒ビピリジル N,N’-ジオキシド類の創製、ならびにこれらを用いた効率的な速度論的光学分割法の確立」を目指している。初年度はDMAPO二量体構造の炭素4,4’位にアルキル基を導入した軸性不斉分子(2,2’位で連結した構造を有する4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジル N,N’-ジオキシド類)の調製法の確立を試みた。まず、2-ブロモ-3-ピコリンを出発原料とし、遷移金属錯体を触媒に用いてホモカップリングを行ったところ3,3’位にメチルを導入したビピリジルを調製することができた。次いで、酸化剤を作用させてN-オキシ化し、軸性キラリティーが内在すると考えられるジオキシドへと導いた。ここで得られた化合物にキラリティーが存在するかどうかが本研究の最初に明らかとすべき課題であった。そこで、実際に我々が調製したジオキシドの光学分割を試みたところ、無事に異性体の分取に成功し、それぞれの光学活性体が安定な化学種として単離できることが分かった。すなわち、初年度の重要な成果はN,N’-ジオキシド類がその二つのN-オキシド基の立体反発によって自由回転が禁じられることでこの分子の光学異性体がそれぞれ室温で安定に存在し、室温では互変異性化が進行しないことを実験的に証明できたことである。引き続き、このようにして得たRおよびS体のビビリジルの4,4’位にジメチルアミノ基を導入を試みた。ここでは、ニトロニウムイオンを芳香環に作用させ求電子反応を実施することで4,4’位にニトロ基を導入することに成功し、最後に塩素化を経由してアミノ基への変換操作を行い、最終目的物である3,3’-ジメチル-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-2,2’-ビピリジル N,N’-ジオキシドの全合成を完了した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

触媒合成はほぼ計画通りに進んでおり、初年度は新規塩基触媒である3,3’-ジメチル-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-2,2’-ビピリジル N,N’-ジオキシドの全合成を達成することができた。現在はこの成果を学術論文化するために大量再合成と物性値の収集を進めている。

今後の研究の推進方策

初年度に当初の目的であった3,3’-ジメチル-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-2,2’-ビピリジル N,N’-ジオキシドの全合成を達成することができたので、現在はその物性の評価を行うと共に、これを大量合成して不斉有機合成反応に活用するための準備を進めている。さらに、軸性キラリティーに加えてピリジン環接合部の隣接位に点不斉を導入した光学活性DMAPO二量体を設計し、こちらの触媒についてもその性能を追求したいと考えている。次いでこれらの計画実施により得られる新しい軸不斉型光学活性DMAPOを塩基触媒として用い、不斉アシル化反応の検討を行う。具体的には、我々のオリジナルな脱水縮合反応である置換安息香酸無水物を活用したエステル化、アミド化ならびに芳香環アシル化反応を順に行って光学活性な有機分子の供給法確立を目指す。この際、例えばラセミ体のアルコールを原料として用いればラセミ求核剤の速度論的光学分割が可能になるものと予想され、一方でアシル化剤側をラセミ体として反応に供すれば相当する求電子剤が光学分割されることになるので、求核剤ならびに求電子剤のいずれの光学活性体を与えることのできる柔軟な不斉合成反応への展開も視野に入れている。また、これらの反応を分子内脱水縮合へと適用することにより、従来は世界的にも例を見ないラクトンあるいはラクタムなどの環状化合物の不斉合成反応の開発が実現できるものと期待している。

次年度の研究費の使用計画

初年度全合成を達成した3,3’-ジメチル-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-2,2’-ビピリジル N,N’-ジオキシドの物理的ならびに化学的性質を明らかにするため、核磁気共鳴等の各種スペクトル解析やX線結晶構造解析を行う。さらに、CDスペクトルやVCDスペクトルを測定することで光学的性質を明らかとする。そもそも、DMAPOの構造上の特徴を生かしてビピリジル N,N’-ジオキシ類に軸不斉を導入できるか否かは、実際に化合物を合成しない限り結論のでない課題であり、我々の初年度の結果からビピリジル N,N’-ジオキシド類に軸不斉が導入できることが分かったこと自体に大きな学術的意義がある。したがって、次年度実施する光学的特性の解明には特に興味が持たれるところである。また、点不斉を導入したDMAPO二量体の合成については、以下の供給法を計画している。まず、ビピリジルを出発原料として用いN-オキシ化、ニトロ化、塩素化さらにアミノ化を経由してDMAPOの二量体を合成する。次いで、Friedel-Crafts型の芳香環アシル化を行い、DMAPO二量体の炭素6位にカルボニル基を導入した後、不斉還元反応を行って光学活性なカルビノール化合物へと変換する。さらに水酸基をアルキル化することにより対応するエーテルヘと導き、分子内で縮環部位を形成させれば基本骨格の構築が完了できるものと予想している。一方、不斉有機合成反応の触媒として使用する際の対象反応はラセミアルコールの光学分割反応、ラセミアミン類の光学分割反応、およびラセミヒドロキシカルボン酸のラクトン化による速度論的光学分割反応等を具体的に利用を考えており、上記新規触媒を用いることで医薬品や機能性液晶の原材料として役立つ有用な光学活性有機化合物の新規製造法が明らかにできると考えている。上記研究遂行のため、試薬代等の消耗品として研究費を使用する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] (R)-(+)-N-Methylbenzoguanidine ((R)-NMBG) Catalyzed Kinetic Resolution of Racemic Secondary Benzylic Alcohols with Free Carboxylic Acids by Asymmetric Esterification2011

    • 著者名/発表者名
      Nakata, K.; Shiina, I.
    • 雑誌名

      Org. Biomol. Chem.

      巻: 9 ページ: 7092-7096

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Convenient Method for the Kinetic Resolution of Racemic 2-Hydroxyalkanoates Using Diphenylacetic Anhydride (DPHAA) and a Chiral Acyl-Transfer Catalyst2011

    • 著者名/発表者名
      Nakata, K.; Sekiguchi, A.; Shiina, I.
    • 雑誌名

      Tetrahedron: Asymmetry

      巻: 22 ページ: 1610-1619

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Kinetic Resolution of the Racemic 1-Heteroarylcarbinols by the Asymmetric Esterification Using Diphenylacetic Acid with Pivalic Anhydride and a Chiral Acyl-Transfer Catalyst2011

    • 著者名/発表者名
      Shiina, I.; Ono, K.; Nakata, K.
    • 雑誌名

      Chem. Lett.

      巻: 40 ページ: 147-149

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Kinetic Resolution of the Racemic 1-(Aryloxazol-2-yl)carbinols with Achiral Carboxylic Acids by Asymmetric Esterification: A New Method for the Preparation of Chiral 1,2-Amino Alcohols2011

    • 著者名/発表者名
      Nakata, K.; Ono, K.; Shiina, I.
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 82 ページ: 1171-1180

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Various Synthetic Method Using Aromatic Carboxylic Anhydrides2011

    • 著者名/発表者名
      Shiina, I.
    • 雑誌名

      TCI MAIL

      巻: 144 ページ: 2-15

  • [学会発表] ゴルジ体阻害活性を有する新奇双環性化合物の不斉全合成2012

    • 著者名/発表者名
      椎名 勇
    • 学会等名
      「Cancer Cell Informaticsによる創薬研究会」第2回研究会(招待講演)
    • 発表場所
      公益財団法人がん研究会
    • 年月日
      2012年2月9日
  • [学会発表] リダイフェン合成展開による創薬戦略2012

    • 著者名/発表者名
      椎名 勇
    • 学会等名
      文部科学省がん支援・化学療法基盤支援活動 第2回シンポジウム(招待講演)
    • 発表場所
      慶応大学日吉キャンパス
    • 年月日
      2012年2月22日
  • [学会発表] ラセミ2-アリールプロピオン酸類の静的および動的速度論分割反応の開発2011

    • 著者名/発表者名
      椎名 勇
    • 学会等名
      第4回有機触媒シンポジウム(招待講演)
    • 発表場所
      東京理科大学
    • 年月日
      2011年9月17日
  • [図書] トップドラッグから学ぶ創薬化学2012

    • 著者名/発表者名
      椎名 勇
    • 総ページ数
      199
    • 出版者
      東京化学同人
  • [図書] 天然物合成で活躍した反応2011

    • 著者名/発表者名
      椎名 勇
    • 総ページ数
      209
    • 出版者
      化学同人

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公開日: 2013-07-10  

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