研究概要 |
本研究では新規不斉触媒の開発を目的として様々な求核性塩基を調製し、それらの特異な物性の測定ならびに各種有機合成への適用を試みた。 初年度は2-ブロモ-3-ピコリンを出発原料とし、5工程を経て最終目的物である3,3’-ジメチル-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-2,2’-ビピリジル N,N’-ジオキシド(DM-DMAPO)の全合成を完了した。引き続き次年度はキノリン残基を分子内に包含する3,3'-ジメチル-4,4'-ビス(ジメチルアミノ)-2,2'-ビキノリル N,N'-ジオキシド(DM-DMQO)を考案し、これをアントラニル酸から調製する検討を行った。実際にアントラニル酸から導かれた2-アミノベンズアルデヒドのホモカップリングを行ったところ対応するビキノリン型化合物が得られ、さらに、DM-DMAPOの合成の際と同様に過酸を用いることでN-オキシ化を進行させ目的とするN,N’-ジオキシドを入手することができた。引き続き4位への置換基の導入を試み、ニトロ化、塩素化およびアミノ化を経ることでDM-DMQOの全合成をアントラニル酸から7工程で達成した。また、N-メチルベンゾグアニジン(NMBG)を不斉求核塩基として設計し、新しいグアニジン型のアシルトランスファー触媒の創製を試みた。 最終年度はこれまでの検討を通じて供給可能となった新しい光学活性化合物であるDM-DMAPO、DM-DMQOおよびNMBGを塩基触媒として用い、ラセミアルコールの速度論的光学分割反応、ラセミアミン類の速度論的光学分割反応、ラセミカルボン酸の速度論的光学分割反応、ならびにラセミカルボン酸の動的速度論光学分割反応等を試みた。加えて、以前から我々の研究室で継続的に調査している不斉アルドール反応や不斉アリル化反応にこれらの触媒を適用することによって、炭素-炭素結合の形成を伴った不斉合成への展開を図った。
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