研究課題/領域番号 |
23655046
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飛田 博実 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30180160)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | フラーレン / 内包フラーレン / リチウム / 化学修飾 / 遷移金属錯体 / PCBM |
研究概要 |
2011年3月11日に起こった東日本大震災の影響で当研究室は甚大な被害を受け,既存のグローブボックス,ドラフトチャンバー,NMR等の大型装置が全て破損した。交付申請書提出の段階で予想したよりも遥かに長い期間,本来の研究ができない状態が続いたため,研究計画の大きな変更を余儀なくされた。当初は,カチオン性リチウム内包フラーレンそのものを配位子とし,遷移金属フラグメントに配位させる研究を計画していたが,遷移金属フラグメント合成が困難になったため,逆にカチオン性リチウム内包フラーレン配位子を化学的に修飾し,金属への配位力の向上と機能性の付与を目指すこととした。東京大学松尾豊特任教授との共同研究により,カチオン性リチウム内包フラーレンの錯体化を指向した化学修飾法の検討を行った。化学修飾方法を確立するため,PCBMと呼ばれるフラーレン誘導体のリチウム内包フラーレン類縁体を合成し,これを分離精製することに成功した。具体的には,カチオン性リチウム内包フラーレンにジアゾアルカンを反応させた後,電解質を移動相に添加したHPLCを用いて精製することにより,フラーレン骨格の[5,6]位に有機基が付加したリチウム内包PCBMを単離した。また,この[5,6]付加体を加熱することにより熱異性化させ,[6,6]位に有機基が付加したリチウム内包PCBMを単離した。これにより,カチオン性リチウム内包フラーレンに置換基を導入可能なことが確認された。また,金属内包C60フラーレンについて,その表面に有機基を導入し構造解析を行ったのは本研究が初めての例である。この成果は第42回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウムにおいて発表した。次年度ではこの成果を踏まえ,新規内包フラーレン配位子の合成と錯体化を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今回,2011年3月11日に起こった東日本大震災の影響で長期間実験を中断せざるを得なくなり,またグローブボックス,ドラフト,NMR等の大型装置も8ヶ月から1年近く使用できなかったため,大幅な研究計画の変更を余儀なくされた。しかしながら,カチオン性リチウム内包フラーレンへの有機基の導入による化学修飾の基礎技術は確立することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
「9. 研究実績の概要」にも述べた通り計画を変更し,当初計画とは異なる錯体の合成を目指す。そのため,機能性フラーレン錯体合成の第一人者である東京大学の松尾特任教授を連携研究者として加え,新規リチウム内包フラーレン錯体合成を行って行く予定である。具体的には,松尾研究室が持つ独自の五重付加型フラーレン-遷移金属錯体の合成技術を応用して同様のリチウム内包フラーレン錯体を合成し,リチウム内包に伴う物性の変化や内包リチウムイオンの挙動を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に化合物合成に使用する物品の購入と,成果発表および研究打合せのための旅費として使用する。その他に,研究補助のための人件費,研究成果投稿料および修理費を計上した。
|