研究概要 |
・新規ヒドロゲナーゼの単離:水素酸化還元酵素であるヒドロゲナーゼは、水素の酸化とプロトンの還元を行うため、電池のアノードとしてもカソードとしても機能できる。このような有用な機能を持ち、さらには環境調和型触媒であるヒドロゲナーゼは、近年最も注目を集めている酵素である。しかし、これまで知られているヒドロゲナーゼは、その脆弱性が大きな問題点である。本研究では、阿蘇山から新種の菌体Citrobacter sp. S-77を採取し、その菌体から新規[NiFe]ヒドロゲナーゼを発見することができた(J. Biosci. Bioeng. 2012, 114, 479)。このヒドロゲナーゼは、酸素と熱に対して高い耐性を持つ極めて珍しい性質を持つ。 ・ヒドロゲナーゼモデル錯体の開発:上述した新規[NiFe]ヒドロゲナーゼの反応特性を解析し、ヒドロゲナーゼモデル錯体の開発を行った。支持配位子を系統的に変えることによって、水素と酸素を選択的に活性化するニッケル-ルテニウム錯体を合成した(Organometallics 2013, 32, 79)。熱力学的・速度論的解析により詳細に検討することで、水素と酸素の選択的活性化反応について、非常に有用な知見を得ることができた。さらに、ニッケルと鉄を用いた完全な[NiFe]ヒドロゲナーゼモデル錯体の開発に成功した(Science 2013, 339, 682)。この錯体はヒドロゲナーゼの反応特性の全てを人工的に再現している。 ・電池の作製:上述した、水素と酸素を選択的に活性化できるニッケル-ルテニウム触媒を用いて燃料電池を作製した(ChemCatChem, in press, DOI: 10.1002/cctc.201200595)。インピーダンススペクトルやターフェルプロットにより、詳細な特性評価実験を行った。
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