本研究は、光機能化したランタニド錯体を用いて、光によって駆動する新たな物質変換に挑戦するものである。具体的には、「集光配位子:吸光係数の高い縮合多環式芳香族基を導入した配位子」を用いて反応活性なランタニド錯体を合成し、光エネルギーとランタニド錯体自身が持つ窒素分子との親和性を利用して、難易度の高い窒素分子の窒素-窒素三重結合(N≡N)の切断反応の開拓を目指している。平成25年度は、実験計画に沿って、平成23、24年度に得られた知見をもとに新規錯体の設計・合成および得られた錯体の光機能・反応性の解明に集中して研究を進めた。その結果、ペンタメチルシクロペンタジエニルおよびトリアザシクロノナンを基本骨格とする集光配位子およびそれらの2価および3価のランタニド錯体の系統的な合成法を確立することができた。光機能・反応性の解明においては、「光応答性ガドリニウム錯体」の集光配位子を化学修飾することによって、化学反応に関与することのできる「配位子の励起三重項状態」を効率的に生成することができ、さらにそのエネルギー準位および寿命が制御可能であることを明らかにした。得られた結果は、光によって駆動する物質変換系を構築する上で重要な知見であり、本研究を通して開発した「光応答性ガドリニウム錯体」が不活性小分子の変換に有望な触媒となる可能性を示すことができた。上記成果および本研究遂行に伴い派生した成果は、1件の国際特許出願(PCT)および1報の学術論文としてまとめた。
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