研究課題/領域番号 |
23655058
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
島田 茂 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 研究グループ長 (40357207)
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研究分担者 |
五十嵐 正安 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 研究員 (30552145)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ケイ素クラスター / ケージ化合物 / 遷移金属錯体 / 化学合成 / 薄膜材料 |
研究概要 |
当初の予定通り、シクロペンタシランSi5H10およびシクロヘキサシランSi6H12の合成を行った。シクロペンタシランに関しては、Si5Ph10の脱フェニルブロモ化によるSi5Br10を経てLiAlH4で還元する従来法で問題ないことが分かったが、保存中に何らかの反応により白色固体に変化してしまう問題が生じた。種々検討したところ、蒸留精製後、ベンゼンやヘキサン溶液とし遮光保存することにより白色固体が生成しないことを見出した。一方、シクロヘキサシランは、トリアミンを用いたトリクロロシランの不均化によるSi6Cl14アニオンを経る手法を用い合成した。副生する塩化水素をトラップするモノアミンを別途添加することにより、既知の方法よりSi6Cl14アニオンの収率が大きく改善することを見出した。シクロヘキサシランに関しても、シクロペンタシランと同様の精製・保存法が適用可能である。 6族および8族の前駆体遷移金属錯体として、低原子価錯体、有機配位子の脱離を想定した錯体、アミンの脱離を想定したアミド錯体等を合成・選択し、プリカーサー分子の合成検討を開始した。有機配位子を有する鉄錯体とシクロペンタシランとの反応では、反応が進行し不溶性の生成物が得られた。シクロペンタシランは多数の反応点を持つことから、オリゴマーもしくはポリマーが生成した可能性を示唆している。溶媒可溶成分のNMR分析により、原料の鉄錯体上の有機配位子が脱離したことが確認された。一方、8族のアレーン錯体とシクロヘキサシランとの反応では、80℃以上に加熱するとゆっくりと反応が進行し、錯体からのアレーンの脱離及びシクロヘキサシランの構造変化がNMR分析により確認された。上記の2つの反応では、生成した錯体構造の解析が難しく、継続して検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね、当初の計画に沿って進めているが、平成23年度は、震災の影響で年度当初1ヶ月半ほど、また夏期の節電の影響で1ヶ月ほど合成実験が出来なかった分、実験の進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、環状のヒドロシラン類と遷移金属錯体との反応により、プリカーサー分子の合成検討を継続する。ただし、初年度の検討により反応制御がかなり難しいことも分かってきたので、別ルートによるプリカーサー分子の合成法も模索する予定である。別ルートとしては、ヒドロシランの代わりにハロシランを利用する方法や、ケイ素クラスターを予め調製したのち、遷移金属を導入する方法を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、震災の影響により実験がやや遅れ、反応試薬や溶媒等の購入費が当初予定より減ったため、次年度に購入することとした。平成24年度は、反応試薬や溶媒、ガス類、器具類などの消耗品類の購入費、分析費用、情報収集や成果発表のための旅費を主な支出として予定している。
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