研究課題/領域番号 |
23655058
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
島田 茂 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 研究グループ長 (40357207)
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研究分担者 |
五十嵐 正安 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 研究員 (30552145)
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キーワード | 有機金属 / ケイ素 / シラン / ケージ物質 / クラスター / 薄膜半導体 |
研究概要 |
新たな電子材料として期待される遷移金属を内包するケージ型ケイ素クラスター材料を化学合成的手法により提供することを目指し、プリカーサー分子の開発に取り組んだ。 プリカーサー分子用のケイ素原料としては、ケージ構造の形成に有利と考えられる環状シラン類(シクロペンタシランSi5H10およびシクロヘキサシランSi6H12)を主として利用した。シクロヘキサシランに関しては、既知の合成法の収率が低かったため改良法を開発した。 遷移金属内包ケイ素クラスター材料は、遷移金属の種類により性質が大きく変わることが予想されているため、4-10族の種々の遷移金属錯体を用いてプリカーサー分子の合成を試みた。環上ケイ素化合物との配位子交換反応や酸化的付加反応を主に想定し、アミド錯体、アルキル錯体、ホスフィンやベンゼンなどの中性配位子を持つ0価錯体等を用いて検討を行った。多くの組み合わせで反応が進行し、ケイ素配位子が導入されたと考えられる生成物を得ることができた。しかし、原料として用いたケイ素化合物が多数の反応点を持つため、多くの場合オリゴマーもしくはポリマーと考えられる不溶性生成物が得られ、構造を十分に明らかにすることができなかった。また、可溶性生成物が得られた系においても、生成物の構造は複雑であり明確にするには至らなかった。 一部の生成物を用い、CVD法による遷移金属内包ケイ素クラスター薄膜の形成を試みたが、目的とする薄膜の形成には至らなかった。一方で、この検討過程で、環状シラン類がモノシランよりもシリコン薄膜形成に有利な物質であることが明らかとなった。 全く前例の無い取り組みであったため、当初予想した以上に困難であり、期待した成果を得るには至らなかった。しかし、種々の遷移金属前駆体を用いた反応を実施し、多くの知見を蓄積することができた。今後、目的の達成を目指しさらに検討を進めていきたいと考えている。
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