研究概要 |
本研究では、液体存在下の液固界面の動的過程を追跡するための光電子顕微装置を開発することを目的としている。本年度は下記の研究を行った。1 窓中を透過する電子の軌道計算 固体の窓や溶媒が存在するなかで電子レンズにより、電子がどういう軌道を描くかについての計算を実施した。新しく購入した高性能計算機により、物質中での磁場レンズ、電場レンズのレンズ作用に対する理論計算を行った。具体的には、窓を誘電体や金属で構成し、その片方に電子源を置き、磁場、電場の影響を有限要素法で確認し、電子軌道のレイトレースを行った。その結果、20 nmサイズの窓厚については、電子が透過窓を通過し、レンズにより焦点を結び、結像できることがわかった。2 電子透過窓の試作とその性能チェック 電子透過窓の作製した。PVD 法により、0.02 μm厚のSiNx膜をSi基板上に蒸着し、光リソグラフィーで窓になる部分のみをエッチングし、0.02 μmの電子透過窓を作製する。静水圧1気圧に対して、窓が耐えることを確認し、この電子透過窓のSi基板と反対側、液体に接触する面に触媒Au粒子1-2原子層蒸着させた。作製した窓を光学顕微鏡, SEM, XPS,EXPEEM等でキャラクタリゼーションし、厚みの評価を行った。その結果所定のサイズの窓を作製できた。また、PEEMによりAuのナノ粒子から放出される光電子を確認し、結像に成功した。一方1200eVのX線で励起した光電子は透過しないことがわかった。3.上記で示したように電子線透過窓には十分な耐久性を持たせるが、万一の事故に備えて、焦点位置にピンホールを増設し、窓が破損しても装置本体の一部の損傷ですむような改良を行った。さらに正確にピンホールの位置にビームがくるような改良を加えた。
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