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2011 年度 実施状況報告書

固液界面光電子分光法の開発と電極反応への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23655059
研究機関北海道大学

研究代表者

朝倉 清高  北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (60175164)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードPEEM / 表面分析 / 液体界面
研究概要

本研究では、液体存在下の液固界面の動的過程を追跡するための光電子顕微装置を開発することを目的としている。本年度は下記の研究を行った。1 窓中を透過する電子の軌道計算 固体の窓や溶媒が存在するなかで電子レンズにより、電子がどういう軌道を描くかについての計算を実施した。新しく購入した高性能計算機により、物質中での磁場レンズ、電場レンズのレンズ作用に対する理論計算を行った。具体的には、窓を誘電体や金属で構成し、その片方に電子源を置き、磁場、電場の影響を有限要素法で確認し、電子軌道のレイトレースを行った。その結果、20 nmサイズの窓厚については、電子が透過窓を通過し、レンズにより焦点を結び、結像できることがわかった。2 電子透過窓の試作とその性能チェック 電子透過窓の作製した。PVD 法により、0.02 μm厚のSiNx膜をSi基板上に蒸着し、光リソグラフィーで窓になる部分のみをエッチングし、0.02 μmの電子透過窓を作製する。静水圧1気圧に対して、窓が耐えることを確認し、この電子透過窓のSi基板と反対側、液体に接触する面に触媒Au粒子1-2原子層蒸着させた。作製した窓を光学顕微鏡, SEM, XPS,EXPEEM等でキャラクタリゼーションし、厚みの評価を行った。その結果所定のサイズの窓を作製できた。また、PEEMによりAuのナノ粒子から放出される光電子を確認し、結像に成功した。一方1200eVのX線で励起した光電子は透過しないことがわかった。3.上記で示したように電子線透過窓には十分な耐久性を持たせるが、万一の事故に備えて、焦点位置にピンホールを増設し、窓が破損しても装置本体の一部の損傷ですむような改良を行った。さらに正確にピンホールの位置にビームがくるような改良を加えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまでまったく不可能であった溶液と接したナノクラスターおよび金属薄膜の化学状態分析やマッピングを実現する光電子スペクトル(XPS)や光電子放出顕微鏡(PEEM)を開発するために、その鍵となる光電子透過窓作製に挑戦する。今年度はまずその可能性を理論的に確認することから始めた。電子軌道計算を行い、きちんとした像が出ることを確認した。次に最大の難関である電子透過窓の作製を行った。電子透過窓ができるかどうかが本研究の成否を決める重要な要件であり、最大の難関である。その結果紫外線で励起した光電子では、窓を通過して、像を結像させることに成功した。これは、窓が薄すぎて、穴が開いている恐れもあったので、X線により励起した光電子の観測も行ったところ、光電子が通過しないことがわかり、紫外光の場合のみ光電子を透過させ、結像することを示しており、 理論通りの結果を確認できた。さらに静水圧にも耐えることがわかった。万が一の装置の破損を防ぐPEEM装置の改修も終わり、あとは、本実験に備えるところまで来た。全く新しい実験であるので、多くの困難が予想されたが、思わぬほど順調に進んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

溶液と接したナノクラスターおよび金属薄膜の化学状態分析やマッピングを実現する光電子スペクトル(XPS)や光電子放出顕微鏡(PEEM)を開発することを目的に、第2段階として、以下のことを行う。1.液体測定用セルの作製  電子線透過窓の耐久性を調べた後、液体測定用セルを制作して、サンプルホルダーに取り付ける。さらにサンプルホルダーを真空装置に入れて、電子が実際に透過するかを調べる。 さらに、液体測定用セルの中に1気圧のガスをいれ、紫外光にて、光電子の窓を通しての放出を調べる。最後にセル内を水で満たし、超高真空装置に入れて、真空に耐えることおよび光電子の取得可能かを調べる。2.電極反応追跡 まず、電気化学を行うための電極をSiNx膜の上部に作製する。Ptを蒸着し、水ポリマー(電解液)をセルに入れて、サイクリックボルタンメトリーを行い、電気化学計測が可能なことを確かめる。その後に、酸素の還元を行い、紫外光により、光電子放出量の変化の電位依存性を調べる。 光電子放出量は、電子の脱出しやすさに起因する。したがって、表面や電極界面における電位、電気二重層の変化、バンドベンド等の情報を得ることができると期待され、理論計算とともに、電気化学反応が起こっている最中の電子状態を見ることができると期待される。さらに、本研究により完成した手法を放射光施設のある高エネルギー加速器研究機構に持ち込み、そこで、エネルギー可変X線を用いることで、詳細な化学情報が得られることが期待され、新しい界面解析法となると考えている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] A New Collinear-Type Energy-Filtered X-ray Photoemission Electron Microscope Equipped with a Multi-pole Aberration-Corrected Air-Core Coil Wien Filter2012

    • 著者名/発表者名
      T. Miyamoto, T. Wada, H. Niimi, S. Suzuki, M. Kato, M. Kudo and K. Asakura
    • 雑誌名

      Jpn.J.Appl.Phys.

      巻: 51 ページ: 046701-1~7

    • DOI

      10.1143/JJAP.51.046701

    • 査読あり
  • [学会発表] Development of new PEEM2012

    • 著者名/発表者名
      K. Miyazaki,T.Iwaai, K.Asakurua
    • 学会等名
      CRC International Symposium on Green & sustainable catalysis,,
    • 発表場所
      北海道大学触媒化学研究センター(札幌市)
    • 年月日
      2012.Jan.26
  • [学会発表] 試料電圧印加型PEEMの開発と調整(ポスター発表)

    • 著者名/発表者名
      宮崎晃太朗、朝倉清高
    • 学会等名
      放射光表面科学部会・顕微ナノ材料科学研究会合同シンポジウム
    • 発表場所
      大阪電気通信大学寝屋川駅前キャンパス(大阪市)
    • 年月日
      2011.Nov.11

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公開日: 2013-07-10  

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