研究概要 |
医療分野のキーテクノロジーであるバイオイメージング法の感度や分解能の限界を打破することを目標に,磁気共鳴イメージング(MRI)とランタニド(Ln)発光イメージングとの重畳を実現するデュアルイメージングプローブ(DIP)を開発する.本研究では申請者らの見いだしたチアカリックスアレーン(TCA)が複数のLnを含むコアを2個のTCAで挟み込んだ超分子錯体Ln3TCA2を形成することを利用して新しいDIPを創製する. 本年度はまず,単離したDIPが機能する前提となる速度論的安定性を精査した.Ln3TCA2 (Ln: Gd, Eu, Yb)について酸触媒解離反応から加溶媒分解反応速度定数kdを算出し,半減期t1/2を求めたところ7 hとなった.市販コントラスト剤Gd-DTPAの体外排出速度(t1/2 = 1.2 h)に照らして,Gd3TCA2は速度論的に安定であるといえる.なお,Euについてはより速度論的に不安定(t1/2 = 0.5 h),Ybはより安定(t1/2 = 39.6 h)となった.これはイオン半径が小さくなるほど水分子のLnへの攻撃が困難となり,速度論的に安定になるためと考えた. 一方MRIプローブとしての性能の指標である1H緩和能を評価したところ,21 mM-1s-1となり,Gd-DTPAなど市販コントラスト剤を大きく上回る性能を得た.また発光プローブ機能評価のためNd3TCA2およびYb3TCA2の発光量子収率を決定した.それぞれ1.7, 2.3×10-4となり,既報のランタニド錯体のものに比べ遜色ない発光機能であった. 以上全研究期間を通してLnとTCAをベースに副核錯体の自己組織化挙動を解明し,異核副核錯体生成の可能性を見いだした.また副核錯体の速度論的安定性や緩和能,発光機能を評価し,磁気共鳴―発光DIP実現に大きな道筋をつけた.
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