本研究は,疎水性ナノ空間における液相水の気相水への状態変化を利用し,疎水性多孔質粒子を担体として,疎水界面液相水と気相空間からなるハイブリッド固定相を創成すること,および圧力と温度によってその構造を制御する液体クロマトグラフィーを開発することを目的として行った。本年度は,気液ハイブリッド分離システム構築のためのカラムおよびクロマトグラフ流路内の有機溶媒成分の除去法を検討し,ついで,疎水性細孔内における気相の形成条件を調べるとともに溶質の保持挙動を調査し,その分離機構を考察した。C18化学結合型シリカゲルを充填したカラムを装着したHPLCシステムをメタノールで満たした後,純水を通液し,溶出液中に含まれるメタノール濃度を測定したところ,カラムよりもシステム内の樹脂製接液部にメタノールが多く残留していることがわかった。このため,FID検出GCでメタノールが検出できなくなるまで水で洗浄したHPLCシステムを用いて実験を行った。次に,前年度確立した気相生成法に基づいて,高圧下水で満たした C18化学結合型シリカカラムを60 ℃のカラムオーブン中で圧力を解放して充填剤細孔内に気相を生成させた。このようにして構築した気液ハイブリッド系と気相を含まない系について,種々の有機化合物の保持体積を比較したところ,水溶液中の無限希釈活量係数あるいは蒸気圧が大きい化合物ほど気液ハイブリッド系における保持が大きいことが明らかになった。また,気液ハイブリッド系では圧力と温度を変化させることによって気相体積と固液界面水体積を制御でき,これによって分離選択性を大きく変えることができることを明らかにした。 以上の結果から,気液ハイブリッド分離システムによって多様な分離選択性を発現させることが可能であり,環境水中のVOCの分析など実用分析にも適用できることが明らかになった。
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