研究課題/領域番号 |
23655063
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関 実 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80206622)
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研究分担者 |
山田 真澄 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30546784)
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キーワード | 分析化学 / マイクロ流体素子 / マイクロ・ナノデバイス / マイクロチップ / 水力学的ろ過 / 微小液滴 / 抽出 / 生物化学工学 |
研究概要 |
まず,これまでに開発した単分散な微小気泡を用いた連続的分離プロセスについて、その効率化および選択性の向上といった課題の解決に取り組んだ。分離対象となる物質と界面の接触時間および接触界の面積を向上させる必要があるため,気泡径の減少,気泡数の増加,滞留時間の延長などを試みたが,現時点では,抽出量の大幅な増加および選択性の向上を達成するには至っていない。そのため,界面のみならず内部への物質の抽出を可能とする,単分散液滴を用いた液液抽出系への応用展開を同時進行的に実施した。これまでと同様に,PDMSを材質として利用し,水力学的濾過法による液滴の濃縮を可能とする流路構造を設計・作製した。表面の濡れ性,流路幅,導入流量などを調節することにより,これまでの気泡生成と同様,流路合流点において単分散な液滴(例えばヘキサデカノール)を水相である連続相中に形成させることができ,さらに連続相中に含まれるターゲット成分(たとえば色素)を抽出した後に濃縮する,という連続的分離プロセスが可能となることが確認された。なお,気泡と比較した場合に,液滴を用いた抽出系では非常に短い時間スケール(0.1秒以下)であっても,効率的にターゲット成分を抽出することが可能であることが見いだされ,さらにその抽出時間をミリ秒オーダーで正確に制御することが可能であった。また、共存物質の存在下における抽出実験を行い,その影響の評価にも成功した。今回利用したモデル分子では,対象分子の分配特性が分離機構の根本にあるために,液滴のサイズが分離量を決定することになるため,今後はその効率の向上及び連続的分析プロセスへの展開を目指す。また,気泡を用いた分離に関しても,特にタンパク質等の生体分子の分離を視野に入れ,引き続きその効率化を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気泡を用いた連続的抽出プロセスに関しては,その基本原理の確立に成功したものの,実際の分離プロセスとしての適用を見据えた高効率化・高処理量・高選択性をみたすプロセスの改良に関しては,現時点で継続中である。一方,マイクロ流路内を流れる微小な液滴を用いた抽出プロセスという,当初は予期していなかった新しいシステムの開発に成功しており,ミリ秒オーダーの時間スケールにおいても効率的な連続抽出が可能であることを実証することができた。このように当初の計画以上の成果が得られている部分もあり,研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は,これまでに開発した気泡あるいは液滴を用いた抽出プロセスについて,その更なる改良を引き続き行うとともに,抽出挙動の速度論的解析を進める予定である。特に短時間スケールにおける吸着あるいは抽出挙動の解明は,実際の工業的プロセスにおいて重要である反面,それらを正確に見積もる手段がほとんどなかった。そのため,マイクロ流路内における気泡や液滴の滞留時間を制御する本手法を応用することによって,そのような実験を行うためのツールとしての有用性を実証するべく研究を進める予定である。また引き続き,タンパク質等の生体物質を選択的に分離するための添加剤や界面活性剤の検討を行うほか,液滴や気泡が安定に生成されるための各種条件の最適化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
ファブリケーション用試薬・器具,実験用試薬など,主に消耗品の購入に充てる予定である。
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