研究課題/領域番号 |
23655065
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
北川 慎也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335080)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | クロマトグラフィー / 液化二酸化炭素 |
研究概要 |
本研究は、生命活動において重要な役割を担っている不安定化学種の包括的な解析を行うことを最終的な目標としている。不安定化学種を安定に存在させるには極低温を利用することが有効であるが、現在のところ低温下で不安定化学種の網羅的解析が可能である分析法は存在しない。網羅的解析には分離分析-質量分析の組み合わせが有効であると考えられる。そこで、本研究では、クロマトグラフィーにおける移動相として、低温液体(液化ガス、低温超臨界流体)を利用した「低温液体クロマトグラフィー-質量分析」を開発し、不安定化学種の網羅的解析に寄与することを目的としている。 第一歩として、「低温液体クロマトグラフィー」を開発し、その分離特性を明らかにすることを目的としている。まずは、低温液体クロマトグラフィーを実現するための、装置の作成に取り組んだ。H23年度は低温液体として、液化炭酸ガスを用いることを試みた。研究計画では分離カラムの両端から加圧を行い分離場内の圧力を高め、炭酸ガスが液化される条件を構築する予定であったが、試行した結果両端からの加圧では安定的な送液を行うことが困難であることがわかった。そこで、カラム出口に抵抗体を接続し、入口側からの高圧加圧に伴う背圧で分離場内を高圧に保つ方法について検討を行った。抵抗体として粒径5マイクロメートルの粒子を充填したキャピラリーを用い、その長さを適切に調節したところ、分離場の温度を約-40~60℃とすることで、安定的な液化二酸化炭素の流れを得ることに成功した。また、ステンレス流路内をテフロン被膜することで中空カラムを調製する予定であったが、金属(アルミ)ブロックに固定したテフロンキャピラリー管を冷却する、より簡便な方法の開発に成功した。また、別種のカラムとしてキャピラリー内に直接ポリマー構造体(モノリス)を調整する手法についても検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在のところ、実験の心臓部である低温流体(液化二酸化炭素)の送液には成功している。検出方法に関しては、現在制作中のファイバー分光システムでは、シグナルは得られているが、安定性が十分とは言えない。そのため、低温液体クロマトグラフィーの検出装置として利用するにはさらなる改善が必要である。カラムについては、中空カラムについては解決済みであり、また充填カラムについては、ポリスチレン粒子の充填には成功しており、同様の方法でテフフロン粒子を充填することは容易である。すなわち、今後分離特性の評価を行う必要があるが、カラム自体の開発については、ほぼ予定通り進んでいる。 なお、送液および分離場内を高圧に保つ方法を、両端加圧型から入口加圧型に変更したため、試料注入方法については、H24年度に行う予定であった、機械的インジェクターの利用について前倒しで取り組んでいる。 上述の通り、検出システムの開発が不十分であるため、温度・圧力などの条件が分離挙動に与える影響についての検討は、十分に行えているとは言えない。そのため、当初予定よりも進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を遂行する上での課題としては、検出システムの改善が優先事項として上げられる。検出システムの遅れた一因は、研究計画(H23年度申請額2,960千円)に対して、配分額が少なく(1,900千円)であったため、研究計画では購入する予定であったファイバー分光システム(約1,500千円)を自作することにしたため、調整に戸惑っているためである。従って、H24年度の優先事項としては、現在の自作検出システムの改善を行う。それと同時に、H23年度に別途入手(要修理・調整)したファイバー分光システムを用いた検出部を別途構築する。 検出システムを早急に安定化した後、H23年度に行う予定であった、液体二酸化炭素を移動相として用いる場合の、温度・圧力がクロマトグラフィー分離に与える影響の検討を行う。また、当初の予定通り、より簡便な操作で、より安定的な測定結果が得られるよう、低温液体ロマトグラフの改善を行う。次いで、改良したシステムを用いてオンライン生成させた不安定化合物の分析を行い、本システムが不安定化学種の分析に適用できることを示す。また、より低温な液体として液化アルゴンガスを用いる実験を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
検出システムの構築が不十分であったため、上述の通り一部の研究の進捗が不十分であり試薬や装置改善のための部品などで利用する予定であった経費に関する予算消化が遅れてしまった。この持ち越し分については、自作検出システムの改善や、別途入手したファイバー分光システムの修理・調整費として用いるとともに、H23年度の研究計画の未実施分を行うための費用に充てる。 消耗品費は、主として、研究を遂行する際に不可欠な冷媒(液体窒素、ドライアイスなど)、試薬、クロマトグラフ部品、電気・電子部品に用いる。 また、研究の方向性を適切なものとするためには、国内外の関連学会における成果発表とディスカッション・情報収集が必用である。H23年度は関連学会にて情報種集を行ったが、H24年度は情報収集に加え、成果発表を行う予定である。
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