研究課題/領域番号 |
23655065
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
北川 慎也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335080)
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キーワード | 液化低温ガス / 液体クロマトグラフィー / 不安定化学種 |
研究概要 |
生体内の不安定化学種の包括的な解析を実現することを目的とし、極低温により不安定化学種を安定化させる分離分析手法、すなわち「液化低温ガスを移動相に用いる低温液体クロマトグラフィー(HPLC)」の開発を行った。昨年度までに、安定的な液化二酸化炭素の流れを得ることに成功しているが、本年度は、実際に低温液化炭酸ガスを移動相に用いるHPLCを構築し、その基本的な分離特性評価を行った。 装置は炭酸ガスボンベ、インジェクター、ODSカラム、検出器、圧力計、ニードルバルブ、流量計、低温恒温槽を用いて構築した。カラム出口側に設置したニードルバルブにより系内の圧力を制御し、二酸化炭素を安定的に液化・流量制御を行うことに成功した。検出は光ファイバーを用い低温下での吸光度測定を行った。 構築した装置を用いて、アルキルベンゼン類・多環芳香族炭化水素類の分離を行ったところ、液化二酸化炭素を移動相とするHPLCで分離を行うことができた。また、アルキルベンゼン類はアルキル鎖の炭素数を、多環系芳香族炭化水素は二重結合数をそれぞれ保持比の対数に対してプロットするとそれぞれ直線関係が得られた。このことからODSカラムと液化二酸化炭素の組み合わせでは逆相HPLCとして分離が行われていることがわかった。-12℃~2℃の範囲でvan't Hoffプロットを作成すると、良好な直線関係が得られ、その傾きから求められる-ΔH0は、通常の水/アセトニトリル系HPLCで得られる値よりも小さく、低温下においても液化二酸化炭素は十分な溶出力を有する移動相として使用できることが明らかになった。さらに、van Deemterプロットから、その最適線流速は通常のHPLCよりも大きく、液化低温ガスを移動相に用いるHPLCは通常のHPLCよりも高速分離に適していることが確認された。また、光照射により発生した不安定化学種の分析も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までの研究成果としては、研究の基礎となる「液化低温ガスを移動相に用いる低温液体クロマトグラフ」を構築することができたことが大きな成果の一つである。昨年度は、検出システムの構築に、想定外の時間がかかり研究の進捗が遅れてしまったが、本年度は光ファイバーをもちいる検出システムを用いたシステムの構築に成功している。また、機械的試料注入器を用いるクロマトグラフが構築可能であることも実証することができた。 「液化低温ガスを移動相に用いる低温液体クロマトグラフィー」の基礎的な分離挙動についても、今後の研究方針を決定する上で重要な知見を得ることができた。さらに、光照射により発生した不安定化学種の分離を行ったところ、光照射を行わない条件とは異なるクロマトグラムを得ることに成功している。すなわち、基本装置の構成及びその分離特性評価、不安定化学種分析適の試みについては既に達成している。 しかしながら、平成23年度(研究初年度)に生じた検出システム構築の遅れに伴い、申請当初予定していた、より低温で分析をおこなう液化アルゴンガスを移動相として用いる低温体クロマトグラフィーに関する実験をH24年度内に行うことはできなった。これに伴い研究期間の延長を行ったため、研究全体の進捗状況としてはやや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、本研究の心臓部である「液化低温ガスを移動相に用いる低温液体クロマトグラフ」に関しては、既に開発に成功している。今後は開発したシステムを用いて、不安定化学種のより適切な分離条件を決定する際に必須である、基礎的な分離挙動について知見を得ることを進める。さらに、液化炭酸ガスに変わり液化アルゴンガスを用いることができるようにシステムを改良し、より低い温度条件での分離を試みる。 一連の研究を通して明らかになる「液化低温ガスを移動相に用いる低温液体クロマトグラフ」の問題点の改善を行い、よりよい分析システムの構築を試みる。また、必要に応じて「液化低温ガスを移動相に用いる低温液体クロマトグラフィー」に適した分離カラムについても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究費は、消耗品費と旅費として用いる。 消耗品費は、主として、研究を遂行する際に不可欠な冷媒(液体窒素、ドライアイスなど)、試薬、クロマトグラフ部品、電気・電子部品の購入に用いる。 また、研究の方向性を適切なものとするためには、国内外の関連学会における成果発表とディスカッション・情報収集が必用である。H24年度に引き続き、関連学会での情報収集・成果発表を行う予定である。
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