研究課題
ターピリジン(terpy)構造を骨格中に2つ組込んだ人工DNA(terpy2DNA)を合成し、その末端には一級の脂肪族アミノ基を導入した。まず、金電極上にメルカプトプロピオン酸を修飾して電極表面にカルボン酸を導入し、アミド結合を介してterpy2DNAを電極上に修飾した。以前の研究により、terpy2DNAに対してFe2+を添加すると分子内の2つのterpyが近づいてFe2+と2:1の錯体を形成することを分光学的滴定実験から明らかにしている。このときterpy2DNAは全体としてΩ型のコンフォメーションをとりterpyの外側の2つの塩基配列が互いに連結されたような構造となる。修飾電極の電位を掃引すると可逆的な酸化還元を繰り返すことがわかった。このピークの電流値は掃引速度に対して線形となり、かつCVにおけるピークセパレーションは約30 mVであるため、この応答は非拡散種、すなわち電極に固定化された[Fe(terpy)2]2+/3+に基づく酸化還元反応であることを確認することができた。terpy2DNA上の2つのterpyの外側に配置されたDNAの連続配列に相補的なDNAは、terpy2DNAとの二本鎖形成はΩ型のコンフォメーション形成を促進するはずである。Ω型構造形成に伴って錯生成反応も促進されるために、錯体の酸化還元電位が変化することを期待した。しかしながら、電極上に相補鎖を添加してもterpy2DNA上の[Fe(terpy)2]2+/3+の酸化還元電位には有為な差を見出すことはできなかった。そこで、次にCVおよびDPVの掃引速度を変化させ、それに伴う電流値の変化を解析することで、二本鎖形成に伴うDNA構造の柔軟性変化を電気化学により観察することにした。その結果、相補鎖を添加することでterpy2DNAの柔軟性が著しく変化することを確認することができた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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